いつもボクを見つけ出してくれるのは、姉さんだった。
〔キミ専用のスコープ〕
『テツヤみーっけ!』 『なんで…ボクのことを、』 『なんでって…テツヤのお姉ちゃんだから!』 ケラケラ笑う幼い姉さんを見てボクは眩しい太陽のように感じた。 姉さんは中2になると、冷たい月のようになった。それでもボクの憧れの存在には変わりはなかった。 『あれ…姉さん、部活は?』 ある日ボクが部活から帰ってきたら、姉さんが制服姿のままぼんやりソファに座っていた。 『……辞めた』 『…………えっ?』 辞めた?部活を?あんなに夢中になっていたバスケを手放したのか?ボクの思考は混線していた。 『もう、嫌いになったんだ。……バスケを。だから…辞めた』 バスケがボクのことを指しているようで怖くなって、こんな言葉が口から出てしまった。 『…そんなの、嘘だ』 『嘘じゃないよ。本当だ』 『だったら、なんで…なんで泣いているんですか』 指摘されて初めて気づいたのだろうか。姉さんは目を丸くして自分の頬に手を当てた。 『テツヤ、なんで泣いているんだっけ』 『……さあ。バスケが好きだからじゃないですか?』 『私は…好きなのか』 姉さんはごしごし乱暴に目を擦った。ボクはそっと優しく姉さんの頭を撫でた。 『……ありがとう』 恥ずかしそうにはにかみながらまた涙を流す姉さんを見て、ボクは不覚にもときめいてしまった。
「テーツくーん!おっかえりんご!」 「ただいまです」 「なあにー?神妙な顔しちゃってさ」 「……いえ、姉さんは変わったな、と」 「テツ君は身長が変わってないよね!」 「早く樹海に行ってください」 「もう図星だからって怒んないの!」 「……はあ」 昔の姉さんはもっとかっこよくて、尊敬する存在だったのに…。 「まあ、結果オーライですか」 「ん?なに?」 「いえ…なんでもないです」 いつだってボクの姉さんは、憧れの人ですから。 「あーテツ君の汗いい匂い!」 「…………はあ」 こんな変態でも。
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