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聞くのが怖いなら聞かなければいいのに。
そんな声がどこからか聞こえてきそうだった。

「ど、どうって…どうも思ってません。ただ教師ってだけですよ。」
そんなふうに清水は答えた。小学生がみたってきっと心配するであろうほど慌てながら。普通なら『いい先生だと思ってます』ぐらい言うだろうに、彼は『教師だ』と必死に返す。それがどれだけおかしなことなのか本人が気づくことはないんだろうな。

「…てか何でこんなこと聞くんですか」
動揺してしまう自分に鞭打って、清水は俺の問いに精一杯反撃した。
「なんでって…一応、消灯時間後は外出禁止なんだから、」
自分なりにうまい返しができたと思う。

「どうしてあそこにいたのか、って理由くらいは聞いとこうと思って」
「そうじゃなくて…」
「ま、理由なかったみたいだけど。それに、光一のこと何とも思ってないならそれでいいし。そんだけ」
清水は俺の言葉がまるで不正解だとでも言うように食ってかかった。やばい、ちょっとやり過ぎたみたいだ。
もちろんしっかりと意図的に彼の言葉を遮って一方的に話を終わらせる。

「じゃ、二度寝すんなよ」

そう言って、
言葉の理解に苦しんでいる清水を横切って俺は洗面所から出ていった。


振り返ってはみるけれど、清水が出てくる気配はない。ほっとしたような物足りないような、言葉にはしにくい感情が胸の辺りでぐるりぐるりと洗濯機のように回転して混ざり合う。
カッとわざと大きく足音を鳴らして、自室のほうに体を向けた。

俺はずるいのかもしれない。
あいつがこちらを向かないと知っても、それならあいつの想いも叶わなければいいと思ってる。それがどんなに馬鹿らしいことなのかわかってはいるのに、
俺は光一の幸せを願ってはやれないんだ。

彼が幸せになるそのときに、隣に居るのは自分だったら、と思ってしまうから。



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