気まずいとかそういうレベルの話じゃない。俺はできるだけ俺がアイツを好きなことを隠そうと必死だけど、もしかしたらうまくいっていないのかも知れない。
(…こっち見てる、よな?)
清水くんはなぜか洗面台から少し距離のあるところで棒立ちし、俺をじっと睨んでる。
…いや、ぼーっと見つめてる、が正しいのかも知れない。
…長い沈黙と清水の視線にいたたまれなくなって、俺から話し掛けた。
「朝、いつもこのくらいの時間に起きてんの?」
「いえ、今日は早めに目が覚めただけです」
「ふーん」
聞いてみたはいいがどうでもいい。お互いのことなんか知ってもどうしようもないだろ。
清水は早くこの場から立ち去りたいのかすごい速さで洗顔と歯磨きを済ませた。
(んな露骨に避けなくても…)
まぁ清水に嫌われたからって傷つくような俺じゃないけど。
「……」
アイツの好きな奴をこのままあっさり帰すのはなんだかもったいなく感じて、出ていこうとする清水にまた話し掛けた。
「…おととい、なんであんなところにいたわけ?」
直球な問いに自分で言って思わず心臓が大きく跳ねる。
「…特に理由はないですけど」
「じゃあ桜場先生とはいつ会ったんだ?」
言いづらそうにする清水とは反対に間も開けずすぐに再び質問する。
(馬鹿、落ち着け)
彼を問い詰めてしまいたい衝動を必死に押さえ付けようとした。
「俺が部屋を出てすぐ…です」
「…あと一つ。お前、光一のことどう思ってんの?」
やっぱり俺は馬鹿だ。