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夢をみた。
俺が好きな男が、自分の好きな男と笑い合っている姿だった。俺は物陰からただただそれを見つめるだけで。
「ばかみてェ」
こぼれ落ちるように口からでたその声は、幸せそうなあいつには届かなかった。
なぁ、こっち向けよ。
夢って結構シビアだよな。その中ですら、俺の想いは報われない。
「…」
目を開けた。白い天井が挨拶するように俺を見下ろす。
(うーわ。なんか俺感傷に浸ってんなぁ)
可愛らしいとこもあんのね俺って。残念ながら夢見が良くなかったせいか、昨晩は頭上にあったはずの携帯を布団の中から発見すると彼は『4:52』を表示する。お早いお目ざめですこと。
俺は盛大にため息をつきながら立ち上がって、
(顔洗って来っか。)
この階にある洗面所へ向かうことに決めた。そこにたどり着くと、先客が居た。
「あ」
「……」
なぜだか俺はこの背の高い金髪の生徒が苦手である。理由は特にない。直感とかいうやつを信じるタイプじゃないけど、なんとなけなんだから仕方ない。
「…いつもこの時間に起きるのか?」
俺は早く目が覚めることが時たまある。それでそういう時に限って誰かと出会ってしまったりする。その相手が生徒だった場合、俺は必ずこの質問をするんだ。
「…あ、いや…今日はたまたまかな。」
「へぇ」
(…って何で俺はこんな素っ気ない感じなんだ。)
誰にでも平等ってのが俺のポリシーなのに。いつもならもっとこう…やんわりと…
右手を伸ばして蛇口をキュキュと捻ると突然口を開いた様に透明な液体を吐き出し始めた。それが冷水だとわかりきっているから少しだけ躊躇して、でも生徒の前で冷たいのが嫌とか言ってられない。
じゃばじゃばじゃばと床を叩く液体を手の平で水平に切り込むとピリピリと何の恨みがあるのか染み込むような攻撃をしてきた。冷たい、ってなんでこんなに怖いんだろう。
ばじゃっ
反射的に目を閉じた顔が文字通り水浴びする。
(つめった…)
ヒューっと体温が下がっていった。
「うわ。よくこんな冷たいので顔洗えるね梶くん。」
「…え」
オレには無理だわぁとじゃぱじゃぱ右手だけを水浴びさせるコイツは口元を歪めた。それは俺を小馬鹿にして笑っているのか冷たくて顔を引き攣らせているのか、俺にはわからない。
(なんだよ、無理に我慢する必要なかったな)
「……………―――って"梶くん"?」
「おっそ。」
くくくと濡れた右手を口の前にやって嫌な笑い方で肩を震わせる。「梶くんツッコミ下手だなー。そんなんじゃ教師やってけないっしょ」
「…"梶原先生"、だろ」
と、マニュアル通りの注意をする。…人に注意するときにマニュアルがあるかないかなんて知らないけど。取り合えず言いたいことがありすぎて俺には何にも言えなかった。



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