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そりゃそうなんだけどさ、と金髪はガシガシ頭を掻いた。
("けど"ってなんだよ、諦めろよ!)
イライラが降り募っちゃった俺はクソガキ3人をじろじろ睨む。
「えーと、名前なんて言うんですか?」
小さいやつが俺の顔を見た。
(…まぁ、普通は名前聞くわな)
「俺は、」
「梶原先生、だってよ」
「っ…」
せっかく俺が答えようと口を開いたのに、金髪のアホっぽくないほうがそれを遮った。
なんか、とってもとってもすごーくかなりケンカ売られてる気がするんですが、
なぜでしょうか。
「…君達、は?」
こめかみに青筋が怒りマークを作るのを感じながら、それでも一生懸命に笑顔を成形した。
「あ、2年の清水です」
「…後藤でーす」
「長谷川啓太ですよ。
…覚えてくださいね」にっこぉ…となんだか粘っこい笑顔をしたこいつが長谷川というらしいことを知った。
(残りの2人は苗字だけだったのにフルネーム言ったってことは下の名前で呼んで欲しい…とか…んなわけねーか)
よろしく、と言って小さく会釈した。
(誰もが男に対してそういう感情抱くわけじゃないんだし。)
――俺だって、光一以外なんて考えられないわけで。

「そろそろ行こうぜ?」
清水は移動しようと2人に促した。金髪はツインズははいはいと気の抜けた返事をして先を歩く清水についていく。

(さっさと行け行け!)
長谷川とかいう奴の背中を睨んでいると、彼は数歩先で立ち止まった。
顔だけこちらに向けて、ひらひらと右手を小さく振りながら声を出さず口をパクパクと動かす。

"ま・た・な"

「……………は?」
ぞわっと体温が急激に冷める音がした。よく言う鳥肌ってやつですね。

「な、なぁ光一?あの長谷川って奴さぁ…」
声をかけつつ光一に視線をやると、彼はじぃっと一点を睨むようにしていた。
(え?)
なぜか光一は目を細める。俺が声をかけても届かない。その様子を見て、浮かんだのは俺自身だった。俺が彼に光一に向けている視線は、こんな色をしているのかもしれない。
愛しい人に向ける、視線だと、脳が言った。
心はそんなことないと首を振ったけど、脳が正しいことくらいわかった。…なぜって。
俺は彼を見てたから
知っているから
好きでいたから
誰よりも 俺が。
だから、俺が知らない光一を、他の誰かが知っているわけがなくて。なのに、知らない。知らない光一が居る。そんな顔知らない。そんな目をするところなんて見たことが無い。そんな視線を、俺に向けたことなんてあるわけがなくて。
怖くて、怖くて。それなのに、怖いくせに、俺は。

「――清水…だっけアイツ。」
「…え」
(…何だよ)
俺がどんなに名前を呼んだって気づかなかったくせに。アイツの名前をだせば、そんなに簡単に。
「…清水が、どうかしたか?」
「…いや、別に?バランス悪いなぁとおもってさ」
「バランス?」
「金髪二人にはさまれちゃって」
「……そうだな」

それから光一は顔を伏せて、押し黙ってしまった。


 



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