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「どーせ桜場さんとケンカでもして
謝りたいけど電話しずらい
とか そんなことでしょ!?」
「違うよ!!
ほんとにどーでもいい用事なんだって!!」
「いくら京兄でも
"どうでもいい用事"のために1時間悩んだりしないでしょーがっ!!」
「そ…れはっ」
  正直
  "どうでもいい"
なんて
全く思ってない。
俺は光一にノートの礼を言いたいし、
光一に課題を出されたイライラをぶつけてしまったことを
きちんと謝りたい。
(―でも…)
学校の連絡網でもなければ
緊急の用事でもない。
"明日会って言えばいい"ようなことを
わざわざ電話して言うほど
俺は
光一に
近づけたんだろうか?
(―…自分うざ…)
なんでこんな風に考えてしまうんだろう
光一が俺ことをどう思ってるかが
…気になって仕方ない。
「勇気でないんだったらあたしが電話かけてあげるから。
『思い立ったが吉日』だよ?
やるべきことは今日やらなきゃ」
「ね?」と紗希は笑った。
紗希が言った、
ことわざらしきモノの意味はわからなかったけれど―
「―ありが…」
「ねー桜場さんってイケメ〜ン?
あたし紳士的で優しい人がいいなぁっ」
「は?」
紗希は
目をきらきらと輝かせ
なぜか
誰もいない方向を向いて
顔全体を緩(ゆる)ませていた。
「ちょっと…紗希?
お前何考えて」
「ええ〜っ
だってあたしの周りガキ(小学生)しかいないんだもんっ
こういうのも出会いだし
なりふりかまってらんないよね!!」
振り返りながら満面の笑みで言った妹にわいた、謎の恐怖感。
(コイツ光一に手ェ出す気かっ!!
つか『ガキ』って自分も小学生だろがッッ!!)
我が妹は
嬉しそうに電話機に近づき、受話器を取った。「じゃあ押っしま〜
―あっ!!」
「自分でやるっ!!」
俺は紗希の左手からプリントをはぎ取った。
「ちょっと〜!!」
「うるっさい!!そこどけっ!!!!」
(下心丸出しのヤツを光一に近付けてたまるかっ!!)
「えー
1時間もなにもできなかったのに今すぐできんの〜?」
挑発的な紗希の言い方に、俺は眉を吊り上げた。
「できるっ!!」
受話器を左手にしっり持って、
プリントを電話機の隣においた。
横目で光一の家の電話番号を確認しながら、
右手の人差し指でボタンを押す。
ピッ…ピッ…とやけに高い音がして、
(次は…2…次は…)
少しずつ
光一と電話で話す時間が近づいてくる。
「はやくしなよー」
「うっさい!!
間違えないように慎重にやってんの!!」
(あぁもうっ
なんで電話かけるだけでこんな緊張しなきゃなんねーんだっ)
番号を押す指先が少しだけに震えていることが、どうか紗希に気がつかれませんように。



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