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面白い。話してみたい。
何が好きなんだろ
何が嫌いなんだろ
運動は?勉強は?
どんな漫画読むかな
いや、アイツはよまなさそうだな
――なんて話し掛けようかな。


「お前さ、なんで眼鏡かけてんの?」
「…は?」
俺が30分ほど悩んで決めた初めての会話は失敗に終わった。
「…なんでもない」
俺は優等生くんの机の上にのせていた腕を下ろし、ゆっくりと自分の席へ帰ろうとした。
「…だ。」

小さな声が耳をかすめた。振り返って優等生をみる。
「目が悪いからだ!!」
…顔が赤いぞ優等生。
「…っそーなんだ、かしてよ眼鏡っ!」
まえのめりになって、明るい声で言った。
「…いいけど、度強いぞ?」
「へー…って、うわ!!ぐにゃぐにゃする!!」

わざと大きめにリアクションをとり、俺は奪い取った眼鏡を持ち主に渡した。数秒後、名前を聞いてなかったことに気づく。
(新入生代表の言葉の時に言ってたけど…んなもんちゃんと聞いてるわけねーし。)
「あれ、名前なんだっけ?」
「…オレか?…オレは桜場光一。」
優等生くんは斜め右下に目線をやった。俺はニコッと笑って
「俺は梶原京平。よろしく光一。」
一番好感度のいいあいさつをした。
「…!」
光一はふさぎ込んでしまった。
(やべ、しつこかったかな。うざいやつって思われたかも…)
心の声とは裏腹に、俺が発した声は明るかった。

「…なんだよ。腹でもいたいの?」
「いや…光一って呼ばれるの初めてだから…」
(…え?)
光一は右腕で顔を隠した。
「その、…少し驚いた」
(なっ…)
赤くなっている光一をみて、俺まで恥ずかしい気がした。

(なんだコイツっ!?な、名前呼ばれたぐらいでてれてんじゃねーよ!!)「…っ」
「…まるで友人同士みたいだな。」

光一は、腕を机の上に置いて、目を細めてそういった。
(みたいって…)
光一があんまり嬉しそうだったから、俺はカッコつけて漫画の主人公みたいなことを口走った。
「…な、何いってんだよ。もう…友達だろ。」
「……!」
(あー恥ずかしいっ!!あほか俺!!)
心のなかで自分を思い切りぶん殴った。…けど「…ありがとう。…梶原。」
お前がそんなふうに笑うから
(あーくそ、ずりぃ…っ)
「きょ、京平で…いいっ」
言って良かったのかも、と少しだけ思った。

「…ありがとう…京平。」


 


光一と俺は、出会ったその日からいつも一緒にいるようになった。

「光一っ!!やべえよ。数学のプリントしてないんだ!!!!みしてっ!!」

俺が慌ただしく宿題をみせてくれとせがむと、光一がため息まじりに
「たまには自分でやってきたらどうだ。」
と返すのが日常だった。
なんだろ
なんでかな
真面目で優等生の光一とテキトーで軽く問題児の俺。こんな正反対なのに、お前と居るのがばかみたいに楽しい。

…光一もそう思ってたらいいのに…なんて

笑い合いながら
くだらないことを考えた

 



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