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月曜日の7時間目。
存在意義が疑問の教科"総合"。

「えーじゃあ将来の夢について作文を書いてくれ」
(出たよ…)
俺は内心ため息をつく。小学校のころからこの手の作文は苦手だった。作文なんてもんは皆さんご存知の通り思ってもないことをつらつらと述べてどれくらい人に『このこいい子ねぇ』と思わせいかに行数を稼ぐかの争いなわけだけども、どうにも"夢"だの"未来の自分"だのは書きづらくて敵わない。
はっきりと"これ"ってもんがないし、夢ありすぎんのも笑われそうで嫌だ。かといって現実的過ぎるのも書いててテンション下がるし。

「どーすっかなぁ…」
背もたれに体重を預けると彼はぎぃと鳴いた。

「あ、悪いプリント足りないな?とって来るよ」
どうやらコピーした数が足りなかったらしい。担任は走りながら教室を出ていった。
(よし)
今のうちだ、と俺は光一の席の辺りまで近づく。

「お前なんて書くんだよ?」
「…授業中立ち歩くなよ」
「はいはいすみません。…で、なんて書くの」
「あのなぁ」

呆れたよと声が聞こえてきそうだ。わかりやすく肩を落とした光一は俺をじろりと一瞥する。
(光一は何になりてぇんだろ)

「……い」
「ん?」
「…やっぱり言わない」
「えぇえ!?」
(なんだよそれ!)
光一の奴、俺が一回聞き逃しただけでもう言わないだと!?ケチ臭いこと言いやがってぇ!

「なんになるんだよ光一ぃ〜」
「うるさい。…ほら、先生来たぞ」

光一がつい、と視線で担任を指す。
「梶原、早く座れ」
小さく舌打ちをしてから俺は席へ向かった。







それから40分。結局3行、
『将来の夢 1年5組 梶原京平
僕はあまり将来のことについて考えたことはありませんでした。でも、僕は』

で終わり。
(あぁちくしょー浮かばねぇえー!!)



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