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長い時間が流れて俺達は中学3年になった。

「光一」
「ん…?」
「お前、高校どこ行くの?」
俺が昼休みに唐突に聞いたそれが、光一の目をばちくりと見開かせた。
「?やっぱお前も時高?」
"時高"とは時枝高等学校のことで、近所にある公立高校だ。俺達が通う中学から徒歩10分圏内にあり、だいたいの奴がそこに行く。青春謳歌しちゃってる馬鹿も居たりするけど大学進学率は高いほうだし、べつに悪くないだろう。

「…あぁ」

(やった)
なんだか単純にガッツポーズを心の中でこっそりとして、でもきっと俺が喜んでることは表情でバレてる。
「そっか」
「ん」
「じゃあまた3年間一緒だな」

長い時間を一緒に過ごすことが、直接信頼関係や女子がよく言う絆とかに繋がるとは思わない。けどまぁ短いよりかいいだろうし、俺は光一とできるだけ長い間そばに居たいのだ。

そのときの俺はあんまりにも楽観的で、馬鹿で単純で。
光一がどんな表情をしていたかなんて気づくこともできなかった。









だから耳を疑った。光一と、担任の会話を聞いた時は。
「お前なら受かるよ、天道学院」
「はい」

その日クラス当番だった俺は担任のもとに日誌をとりにいっていて、職員室の前で呆然と立ち尽くした。
(天道、学院…?)
そこは有名な超進学校で、国内で3本の指に入る有名校だった。
(でも、なんで、だって)

「遠いだろう?天道は」
「はい、近所に父の系列の病院があるんですが、父がそっちに移るみたいで」
「じゃあ引っ越すのか」
「はい」

寂しくなるなぁと言った担任に光一はありがとうございます、とよくわからない礼を言って、俺はふらふらと歩きだした。


そうか
引っ越すのか
違う高校へ行くのか

会えなくなるのか
そうか
そうなのか

「そっ…か」

きっと悲しくなるはずなのに、涙の一欠けらも出なかった。


 



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