14/17



「…っはぁ!!」
勢い良く扉をスライドさせると、教室中の顔がこっちを向いた。
けれども残念、今の俺にそんな攻撃通じない。
ぜぇぜぇ肩を大きく上下させながら、廊下側から2番目、後ろから3番目に腰を落とす。
いつもなら体育で長距離走ったあとも女の子の目ぇ気にして汗拭いてなんでも無いようなふりをするのに、
今の俺には全部が全部、
どーでも良かった。
「はぁ…ッはぁ」
上半身を机の上に乗っけて、目をつぶって。汗がうっとうしい。
そんなことしてると、がらりと後ろの扉が開いて、教室内を歩く足音。
(…光一)
彼は窓際の前から2番目。歩くアイツに目が勝手に焦点を合わせた。
(もっと急げよな ばーか)
まだ先生は来てないからラッキーだけどさ。
「…ッはぁっはぁ…」
息が上がっているのは
頬が熱いのは
心臓の鼓動が、どんどん早くなっていくのは
走ってきたから、であって
決して
光一のせいとかじゃない。
だって俺は
光一に、友人に、ドキドキしたり
しないから。
"じいさんになっても親友だ"
(…なんだそれ
……ばっかじゃねーの)
ふっと無意識に口角が持ち上がった。
そうだと、いいな。
そうだと、嬉しいよ。
きっと、そうだよ。
そうだよ、たぶん。
そうだよ、絶対。
そうじゃない未来なんて、嫌だ。
(…………)
どうでもいい疑問がひとつ、頭の中で浮かび上がった。
――親友は、俺と光一だけだよな…?
"親友"なんて、
じいさんになっても一緒にいるなんて
他のやつに
言うなよ
絶対
俺以外に、言わないでくれよ。
俺達の 俺達だけの
2人の約束なんだから。
じいさんになった俺の横にいるのは、光一…だけで。
光一の横には…俺、が…
(――ってなんで2人きりなんだ他に友達いないのかっ!つか結婚して奥さんと子供がいるんじゃー…)
なんていうのをうつぶせになりながら黙々と考えていると、
先生が教室に入ってくるのに全然気づかなかった。
驚いてがばっと起き上がって、授業はごくごく当然に始まる。
前の授業と違うのは、俺と光一が仲直りっぽいのをしたってことだけだった。



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -