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気づけば彼の腕がするりと背中に回って
どさり、と寄り掛かられた。
「ぇ!?わ、たったっ」
急に体重をかけられてうまくバランスを取れなくなった俺は、2、3歩足を後ろに進めた。
トン、と背中が壁にぶつかる。
俺と光一の体重をそいつに預けた。
「っこう…」
ふわっと黒い髪が俺の頬を撫でる。男のくせして甘ったるいシャンプーの香りが鼻先をくすぐった。
(あれ?)
触れ合った部分から伝わるのは、
光一の、 体温。
「…っ」
何か言ってやりたいのに、ぱく、と開いた口は震えたままそれ以上動かない。
(なんか、なんか、なんかいわねぇと…!!)
ばくんばくんばくん
心臓の鼓動は全身を駆け巡って、つーかもう体全体で脈打ってるみたいで。
(なん…っなんだよっ)
心臓、痛い。
「あ、悪い」
光一はあっさり壁に手をついて体を起こした。
(何だ何だ何だ何だこれは)
俺はがしっと光一の肩を掴んで、べりっと彼を引きはがさせてもらった。
「何すんだよ」
「…っこっちのセリフ!!きっ気色悪いんだよ馬鹿!!」
俺の言葉に不満げに光一は口を尖らせて、
「京平が手を引っ張ったんだろ」
「は、離すだろ普通…っ!」
顔を見れないのは、
汗が背中を濡らすのは
目がウロウロ泳ぐのは
なんで
なんで
なんでだ。
キーンコーンカーンコーン。
小学校のチャイムよりも明るい音が校舎を内側から包み込んだ。
なんだかすごくすごくホッとして、
「ほ、ほらチャイム鳴ったじゃん、行く、ぞ」
「待って」
「!」
せっかく足を前に出したのに、またもやこの野郎は俺の手を掴んだ。
(あれ あれれ あれー?)
手、手が。
てか光一って手ぇでかいな、男らしいですね。
(なんだ なんだよ
離せ、離せって)
「京平」
呼ぶな、呼ぶな、
その声、で。
なんか知らないけど
俺の体に悪そうなんだよ
「京平!」
「だーもーわかった!
チャイム鳴ったんだから行こうよっ!!」
「だってお前が、」
「わかったって!!親友っ親友だから!!」
光一の言葉を遮るために、天井にむかって叫んだ。
「え」
きょとん、という擬音がぴったり過ぎる光一の目を見て、俺も目を見張る。
「…え」
足の裏からせり上がって来る熱は、うん、"恥ずかしい"という本能。
(何…言ったんだ俺…っ)
「―じゃあ…」
なんでコイツは嬉しそうに目を光らせるんだちきしょう。
「や、やばいやばい先生来ちゃうよー光一くんっ」
「…そうだね京平くん行こうか」
ようやくようやくようやく光一は俺に自由をくれて、どっからか連れて来られた力を消費するために白い廊下を全力疾走した。
光一の足音もすぐに聞こえなくなった。
どーせどーせ笑ってるんだろうけど。
(う、ああああああ!!!!)
声に出せるわけない叫びを心の中に轟(とどろ)かせた。



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