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(言ってどうすんだよ)
とか
(そんなこと言って
わさわざ光一に嫌な思いさせる必要なんかないだろ)
とか
そんなふうに思うくせに
(一緒にいたい)
だの
(心配かけてやりたい)
…だのと
何様だよ自分。
(…ばっかじゃねーの)
右手で長い前髪をかきあげる。
馬鹿だよ
知ってるよ
「…昨日、お前の家に電話したら
お前の親父さんが出てさ
そんとき聞いたんだよ」
「!」
光一を傷つけるだけだとわかってて
それでも俺は
打ち明けたいと甘えてしまう
「あの時の…京平だったのか」
「まーな」
「…何を言われたんだ」
だって
だってさ
「…っ…俺、は」
あんなん
言うかなー普通。
言わないよな?
おかしいのってあっちだろ?
「俺は、光一…の…っ」
「…京平?」
うつむいたまま肩を小刻みに震えさせる俺に、光一が声をかける。
"何を言われたか"って?
そんなこと聞くなよ
思い出したくないに
口に出したくないに
決まってるだろ
馬鹿野郎
「…俺、みたいなやつに光一と、
親しくして欲しくないんだって…さ」
ははは…と喉から無理矢理引っ張り出した 掠(かす)れた笑い声が反響する。
悪いか
悪いかよ
あー悲しかったよ
苦しかったよ
悩んだよ
悩み倒したよ。
「な、そんなこと、なんであの人が…」
「知るか んなこと…っ」
そんなことを
大事な奴の親から言われて明るく笑えるほど
俺は強くない。
だから
逃げようとしたんだ
でもそれすらできなくて
やっぱり一緒に居たいよ
駄目でも
つりあわなくても
ただ、いつものように
下の名前で呼び合って
一緒に登下校して
給食食べて
宿題うつさせてもらって
体育で競って
ふざけて
しゃべって
笑って

それだけでいいから

だから、
だから
だから。
一緒に、隣に
居させてくれって
誰かに頼んだ。
光一の父親でも
光一でも
ましてや
俺自身でもなくて
あくまで誰かに、
認めてくれる誰かに。
「……っ」
光一は眉を寄せて
悲しい悲しい顔をした。
――俺が、
そうさせた、んだ。
「…じゃあ、京平がおかしかったのって」
そんなことを求めたんじゃないのに。
「っ…!も、いーだろ。教室戻る…ッ」
"俺と一緒に居たら光一を困らせるだけだ"
光一の左を通ろうと歩き出すと、手首をつかまえられて強引に歩みを止めさせられた。
「待てよ。そんな、家とか親とか、関係無いだろ!」
「…っ」
―――ああ。
「お前は、オレのことを…初めて、友人だって認めてくれた奴なんだ」
ああ、
ああ
……嬉しい。
「…めんどくさいのも、わかる…けど
でも……っ」
光一はたぶん本当に友達を作ることに慣れていなくて、
普通なら小学生ぐらいに友人作りにこなれてきて
"愛想笑い"や"出まかせ"を覚えて薄くて広い友情の網を張る。
1人と仲良く無くなればその代わりの奴と急に仲良くしだして居場所を作る。
……でもそれができない光一は、1人のことが大切で。
光一は、
俺が
大事なんだって。
心地よい自惚れをくれる。それが
ただの自惚れじゃなければどんなにいいか。
「…いいか京平」
「え…っ」
廊下に小さく響いた光一の声は、
俺の心臓を大きく震わせた。
名前を呼ばれたぐらいでなんだよ
軟弱な心臓め。
「オレは、お前と友人でいるのをやめる気はない。」
鋭い目で睨んで、馬鹿みたいに子供じみた宣言を聞かされた。俺は思わず眉間にシワを寄せて。
「…は…?」
「お前が、オレと友人で居たくない理由が、
そんなにくだらないものなら、」
(――く…!?)
"くだらない"なんて
彼はオレの苦悩をあっさり吹っ飛ばしてくれやがった。
腹が立った
…のに、嬉しかった。
「じいさんになっても、
ずっと 親友だからな」
「………………………………………………………………………………………………………はぁあ!?」
かーっと急激に俺の体温は上昇して、真っ赤になっているであろう顔からだらだら汗が溢れた。
「…なんだよそんなに嫌なのか」
「いやいやいや、そーじゃなくて、誰宛てのプロポーズだそれはッ!!」
「プ!?お前ちゃんと話聞いてたのか!?"親友"だって言ってるだろ!!」
「――ッ、その単語連呼すんなっ!!」
心臓がなにやらダンスを始めたらしく、ばくばくばくばく鼓動が全身に響き渡った。
"親友"
"親友"
"親友"
――俺と、光一、は。
(あーもうなんだこれ、わっけわからんッ!!)
「京平暴れるなよ」
…しい
「うるっさい!この…ッ」
嬉しい
嬉しい
(違う、違う違う違う!)
嬉しくて
嬉しくって
(こんな恥ずかしいこと言われて嬉しいわけあるかっ!!)
「わ、」
光一につかまれた手をぐいっと強く引っ張った。それであきらめて離せば良かったものの、親友宣言をした医者の息子はなぜかしっかと握ったままで
(…え!?)



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