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「え…」
「なんつーか、…さ
別に一緒に行く意味なんかないじゃん?
かったるくなっちゃってさぁ」
(…なんだそれ)
自分で口に出した言葉に
心の中でつっこんだ。
人間って不思議な生き物だよな。カケラも思っていない言葉が当たり前のように飛び出すんだもん。
「…かったるく…って…なんだよそれ…」
光一は顎(あご)をひいて軽く俺をにらんだ。
「別に?そのままの意味だよ。」
声色だけは明るかった。
俺は今
どんな顔をしているんだろう
(なんだこれ
嫌…だな)
逃げ出したくてたまらない
「……京平」
(…っ)
名前を呼ばれて肩がぴくりと跳ねた。
それでも。
それでも俺は彼の言葉を無視する。
顔を下に向けたまま
光一の右横を通った。
誰にも怒られないほどにゆっくりとかけていく。
(いーんだよ これで)
と、思う自分と
(言い過ぎたかな)
と思ってしまう自分がぶつかって
なんとも言えない感情がぐるぐると渦を巻く。
わずかに
後者が強かった。
――今、光一が俺を呼び止めたなら
『なーんちゃって
冗談に決まってんだろ』
と 
振り返って笑うのに。
(ありえないよな)
もちろん彼は呼び止めない。
(つーか、これって普通だよな)
漫画の主人公じゃないんだから
敵キャラ?…っぽい光一の父親に
邪魔…反対されてまで
一緒にいる――とか
どこにそんな熱い友情があるんですかー。
…とか。
思った。あの時
立ち尽くしていた光一は
一体なにを考えていたんだろう。
「お前、桜場とケンカでもしたのかぁ?」
「え…っ」
3限目の休み時間。
3、4人で窓の近くに集まってしゃべっていると、
同じ小学校だった田島が唐突にきいた。
触れてほしくなさ過ぎる問いにどきっとしてしまう。
「いーっつも一緒にいるくせに
今日はそうじゃないみたいだからさぁ」
田島は窓枠に手をかけた。
「……いつも一緒とか、男同士で気色悪いことゆーなよ」
田島に背を向けてやる。はぁーとわざとらしく大きめにため息をついて、白い壁に体重を預けた。
光一の様子を横目で盗み見ると、あいつは一人、青い表紙の小説を読んでいた。いつもなら
『なーに読んでんだよ、光一っ』
って肩を叩くところだけどさ。
(あーもういつまで
うじうじうじうじ…うっとうしいっ)
いーじゃんクラスメイト。最高な距離感でさぁ。
近づくのも
遠ざかることも
両方しなくていい。
最高じゃんか。
な?光一
お前だってそうだろ?
お前に、
俺なんか
必要ないじゃんか。



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