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「お。どうした?梶原、なんか用か」
「…先生がノート提出しろって言ったんでしょ」
俺は自分のノートを突き出した。
「あぁ」と言ってから受け取ったオッサンを睨む。
(ぜってー忘れてたなコイツ…)
「じゃーもう俺戻っても…」
「まぁ待て。
ちゃんとかいてあるのかチェックするからな」
そいつは楽しそうにノートをパラパラとめくっていく。
(…うざーい)
教師ってどうしてこうも地味な嫌がらせをするのが好きなんだろうか。
「ん!?なんだ、どうした梶原…!?なんでこんなに綺麗にまとめてあるんだ!?」
(リアクションでか…
テンション高くしてりゃ『面白い先生』と認識されるとでも思ってんのか。
あほだな)
気づかれないよう小さくため息。
辺りを見回せば、きちんと並べられた机に教師達が座っている。
パソコンいじってる人が3人。
なんかかいてるのが2人。
大きな声で電話してんのが1人。
事務員はバタバタとお茶運んだりしながら、雑談。
職員室は、好きじゃない。
100%いじってくる教師の相手はめんどいし、なによりコーヒーくさくって気に食わない。
(あーでも、
夏は職員室しかクーラーついてないから夏の時は好きだな)
くだらないことを考えながら、時間をつぶす。時間っていっても30秒ぐらいだけど。
「先生、もういいっすか」
俺ができるだけ低い声で言うと、もうじゅうぶんいじったと判断したのか、
「おう」
…ですって。
(…結局何がしたかったんだ…)
「…それでは」
振り返って扉に向かって足を進める。
職員室ってのは微妙にせまくて、すぐにたどり着いた。
左手でスライドさせて、自分が通れるくらいまで隙間をつくる。「…それでは」
振り返って扉に向かって足を進める。
職員室ってのは微妙にせまくて、すぐにたどり着いた。
左手でスライドさせて、自分が通れるくらいまで隙間をつくる。
そして、またまた振り返って教師にむかってペコリと頭をさげる。
「しつれーしましたぁ」
小学校の時はそんなんしなかったけど、こう言うのが礼儀なんですって。職員室を出ると、鼻をつくコーヒーの臭いはしなくなった。
まー当然ですが。
はあ、ため息をつく。
"なんでこんなに綺麗にまとめてあるんだ!?"
(…当たり前だろ。)
光一のノート…うつしたんだから。
「………」
壁にもたれかかってみた。
なんだかだるい気がするのは、立ってるせいじゃないらしい。
(なんでかねー)
とか、思ってみるけど。理由なんて考えるまでもない。
てか考えたくもない。
忘れたいし
忘れさせてほしい
「…京平…」
どくん、心臓が力強く脈を打った。
昨日はこの声を聞きたくて電話までしたのに、
今は自然と足が進む。
もちろん、光一がいない方向に。
「待て、京平っ
なんで今日先にいったんだよ!
いつもの時間にいったんだぞ!?」
――…そう
ほぼ日課になっていた"2人で登校"は今日は行われなかった。
俺がいつもより10分以上前に家をでて
先に学校へ向かったからだ。
「京平!」
光一の足音が迫って来る。
お互い早歩きしながらの会話。
「別に?早く来たい気分だっただけ。
待ち合わせてるワケじゃないじゃん
なんで俺がせめられてるわけ?」
「…!責めてるとかじゃなくて
…いつもは待ってるから、変だなと思って」
光一が隣に並んだ。俺もスピードをあげてやる。
「待ってるわけじゃないって!たまたまだっ」
だんだん疲れて息がきれてきた。すれ違う女子の視線が痛い。
「っなぁ、なんで逃げるんだ!?」
「逃げてない!!早く教室行きたいんだよ!!」
「っは、反対方向、だろっ!」
「っあ、そーだっけ!?
今日はこっちに行きたい気分なんだよ!」
我ながら言ってることはめちゃくちゃだ。けれど、正直言い訳がうまくできようができまいが
どうでもよかった。
「っ、京平!!」
「―!!」
光一が俺の腕を掴んだ。
「…い、痛いっ
離せよ!」
声を荒げてみる。
「きちんとわけを話してくれたらな。」
光一のまっすぐな瞳は揺るがない。
「……っ」
「オレが何かしたんなら謝るから」
(…違う
そうじゃなくて)
俺は顔を伏せて歯を食いしばった。
「………っ」
光一につかまれた腕が震える。
「―って、こういうことするから嫌われるんだな
…ごめん」
ぱっ、と光一が手を離した。
低く響いた小さな謝罪は、俺が欲したものじゃない。
気まずそうに光一は眉を寄せる。
「京平、オレは「めんどくさくなったんだ」
俺は、
意を決した彼が放った言葉をさえぎった。



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