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一駅分、
電車に揺られていた俺達は結局一度も言葉を交わさなかった。駅に到着すると、山本は俺の方を見ることもしないまま電車を降りてしまった。それを俺は小走りで追う。
太陽の光を反射するアスファルトをうっとうしく感じながらも、
僅かにふく風は心地よかった。


「…入れよ」
「…うん」
久しぶりに口を開いた山本は自分の家に親指をむけた。玄関、廊下、階段の順に通って、
山本の部屋にたどりつく。
山本はテレビの電源をいれて、いくつかコードをつなげたりした。
白い扇風機のスイッチを押して、"強"に設定する。
「ほい」とコントローラーをパスされた。
「サンキュ」
両手でキャッチ。固いものを素手でとったら手が痛くなった。
「っしゃーいくぞぉ!!」

俺の左隣りの山本は前のめりになる。
「はっ!ボロ負けしてもしらねーぞぉ〜?」

俺は口元をつりあげる。
戦いは始まった。

 

「うらららぁー!!」
「あっ!!てめぇセコいぞアイテム攻撃ばっかしやがって!!刀使えよ!!」
「はっはっはぁ!頭脳派戦士なんだよオレはぁ!!」

ガチャガチャッとコントローラのスティックを荒々しく操作する音が響いて、現実世界じゃ絶対聞けないような効果音が耳にはいってくる。
「ぬぐぐぐ!ぐぁっ!!いてぇっ!!」

ダメージを受けているのは画面の中のキャラクターだっていうのに、ついリアクションをとってしまった。
「っしゃあ…とどめだぁ!!」

山本が声をあげたかと思うと、山本が操る戦士が俺の魔法使いを切り付けた。

「あっ!!」
時すでに遅し。テレビにうつしだされる"Winner・Warror"の文字。
うぉーりぁーってのは戦士って意味らしい。

「あぁあっくそーっ」
体を後ろに倒すと、背中に山本のベットがぶつかった。そのまま寄り掛かる。

「弱すぎんだよ角田はぁ」
勝者の笑みを浮かべる山本。
「もう一回だ!!!!」
人差し指をたてた右手を突き出す。山本は、何度やっても同じさ、と笑った。

 



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