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空はこれでもかってくらい真っ青で、白い雲がキラキラ光る。じりじり照り付ける太陽が憎い。

あの日のようだ、となんとなく思った。

「あっちぃ〜」
山本がため息と一緒に本音をこぼした。

「言うなよそれ」
あぐらをかいている俺が、寝転がっている山本に
「シャツ汚れっぞ」と忠告すると
別にいーよと返された。床がひんやりつめたくて気持ちいいらしい。

軽くなった缶ジュースを口の上にやってひっくり返すと、ぽたり、と一滴だけ舌の上に落ちた。甘いけどぬるい。

「あ〜あ あん時勝ってりゃ今ごろグラウンドで練習してたのになぁ」
山本は空に向かって言った。

「……うん」

"勝ちたかった"
"悔しい"
"悲しい"
そんな言葉は飲み込んで。

高3の夏。
あの試合、3点差をつけられてあっさり負けた俺達は、誰一人だって泣かなかった。
対戦相手の流星学園は強豪で、失点を3に抑えたのは公立高校にしては頑張ったほうだった。

どーせ無理だとわりきっていたって、
負けるのは
引退するのは
嫌に決まっているし 悔しいに決まっていた。

それでも
泣かなかったのは
泣けなかったのは

なんとなく 心のどこかで
この日々が、
キツくて 嫌気がするほどに野球にうめつくされていた毎日が終わることなんて

無いと思っていたから。
それでも、
時間はごくごく普通に過ぎていって。
涙を浮かべて礼を言う後輩の額を小突いて、仲間達と集まってお互いをねぎらい、カラオケ大会をして、お疲れさん、と肩を叩く母にサンキューと返して、いつもより少し豪華な夕食をたいらげて、
早送りされているみたいに、"過ぎる"というより"流れていった"日々。

2年半の野球づけの生活はあっさりはじけて消えた。残された俺達にできるのは、立入禁止のルールを破って屋上で空を見上げることぐらいだ。

…いや、見上げているというより、きっと俺は空に 見下ろされているんだ。

 



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