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そうだな。
俺も当たり前のように同意を示した。

ゲームとか
マンガとか

部活をしていた時はあんなに愛しかったのに、
いざ目の前に現れればなんてつまらないオモチャなんだろう。
いや、ゲームやマンガも大好きだけど
そうじゃなくて。

今、今の俺が 山本が
求めているのは
そんなものじゃない。

校庭の砂は硬くて痛くて、擦りむけて血が出ることなんて日常茶飯事だった。
球場で浴びる太陽の日差しは、もっともっとあつくて、ジリジリ肌は焦がされた。
汗で目が開けられないほど運動をした体で走れば、空気抵抗で生まれた風がひんやりと心地よかった。

なんだろう
なんなんだろう
きっと世界中の辞書を集めても

この感情は
あらわせない。

だから
俺達はなにも
なんにも言えなかった。

 



がばっ と山本が勢いよく起き上がった。
「どーした?」
「…いや、なんつーかさ
えっと…だから」

もごもごと言いづらそうにする山本にため息をつくのと一緒に、俺も体を起こした。

「…なんだよ」
「だから、……あの試合…さ」
俺は無意識に目を見張った。

「……何」
「……なんでもない」
(………)
無理に聞こうと思えばできたのに、俺はそれをしなかった。

言わなくても
なんとなく
わかっている気がした。

「……っなんでも、ない、よ…」
そう言ってうつむいた山本は、頭をわしわしとかく。
「………」
なんだろう
なんでだろうな
自然に俺の手が山本の方に伸びた。


「何すんだよ」
俺の腕の中の山本が言った。
「…なんとなく」
俺が後ろにまわっているから、山本の顔はみえない。
「気色わりーなぁ」

そんなふうに言われても俺が離れないのは、俺の右腕を山本がつかんでいるからだ。あつくて、汗が伝う。

「…角田」
「ん?」
首をまわして俺のほうをみた山本に顔を近づける。

「…!」

一瞬呼吸をとめる。というか、とめるしかなかった。ぐっと息をのんで。柔らかい感触に堪えた。
少しして額に触れていた山本の髪の毛が離れた。

「…なに、すんだよ」
鼻先が当たりそうなくらいの距離。
「あ、もしかしてファーストキスだった?」
山本はからかうように笑った。

「…ちげーよ馬鹿」
実はそうだった。

 



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