You are mine.



もうすぐオレの誕生日。
誕生日っていったら365分の1しかない貴重な日だ。

「5月10日がなんの日かって?」

突然の問いに見慣れた顔が眉を吊り上げる。そりゃそうだろーな、知ってて当然のこと聞かれたんだし。
「…なんかあったっけ?あ、英語の小テスト?」
「…ちっ…げぇよ!」
「えー?なんだっけ?長谷川覚えてるか?」
「知らねぇよ。あー、写真集の発売日とか?」
「ちげぇよ馬鹿!5月10日はなぁっ」

オレの誕生日だっつーの!

言葉の続きを叫ぼうとした時、ぐわらと大きな音がして教室の扉が開く。
「清水」
「!」
ばりっと一瞬で場の空気が変わったのがわかった。やんわりがぴしぴしになる。
「…なんですか、…………桜場先生」
清水はかなり名前を呼ぶのが嫌そうだ。やっぱり嫌いなのかな。

「3日後なんだが…放課後時間をもらってもいいか」
「は!?」

声をあげる清水。
「口説いてんなよ…往来で」
舌打ちをする啓太。

「お前わからない問題があると言っていただろ。今日明日明後日は時間がとりにくいんだ。3日後なら説明してやれる。…マンツーマンでな」
「ま…!?」

オレ達なんて居ないものとする桜場は清水以外を視界に入れない。こいつに見られたって睨み合いになっちまうだけだからなんでもいいけど、先に清水と話てたのはオレだ。

「3日後…って10日?…ですか?」
「あぁ」

「だめだ」

むかつくなー
桜場も清水も。わかっちゃいないんだふたりともさぁ。

「清水はオレと話てたんだよ。それに10日は駄目。予約済み」
「…は?」

桜場がようやく自分の世界にオレを入場させた。だからってなんてことないけど、予想通り互いに譲らぬ睨み合いってね。

清水の机の上におかれたそれが気に入らない。邪魔。

「消えろ」

ぱしん
と渇いた肌の音が空気に溶ける。
桜場は払われた手をすっと引いた。
それでいーのですよ、先生。

「清水はオレのモンだ」





世界は沈黙に包まれる。
男だらけの教室中の人間の世界にオレは取り込まれまくった。
啓太の目が見れない。

「……………………………………………清水」
「…………えっ」
「また来る」

とだけ言って黒いスーツの背中を見せ出て行った。

「あれ。意外に大人しいな」
「っごと、後藤、俺はいつからお前の所有物に、」
「ずっと前から!」
「は」


オレは二人を無視して机の上にうつぶせになった。
むかつく
あーむかつくー桜場の野郎…
5月10日はオレの誕生日だぞ!?清水は一日オレのだっての!!

ふて寝してやった。




「清水…渚にあのコト言うなよ?」
「わかってるよ…後藤には嘘はつけないからやっかいだな…」




―――――――――――
教師という立場上立ち去るしかなかった数学教師。

「後藤…覚悟は出来てるんだろうな…?」

ぎらりと目が銀色に光った。





おわり







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