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(ちょ、マジかよ…)
"最悪"なんて大袈裟な言葉を女みたいに軽く使うのは好きじゃない。けれど、こんなにも"最も悪い"状況は存在しないんじゃないだろうか。1番悪いのは終始偉そうな一条の野郎に屈することだと思っていたけど違ったらしいよ。

「しっかたないなぁ〜」

最初は嫌そうに叫んだくせに、誠(まこと)はなんだか嬉しそうに眉を垂れさせ頭を掻いて、そそくさと机の中の教科書やらノートやらを鞄に詰め込むと右隣りの席に荷物を運んだ。
「…………」
早すぎる展開に俺は目を見張ることしかできない。

「これで良いだろ?」
「え、っ」
にやり、と勝ち誇ったように一条は口元を持ち上げて歯を見せた。
いいわけあるかと突っ込んでやりたかった。これじゃ俺がどうしても窓際の席を譲りたくなかった駄々っ子みたいじゃねーか。そうじゃないだろ。俺が嫌だったのはこのアホに席を譲ることじゃなくて一条が自分が言えばどんなことでも叶うなんて勘違いしてやがってることだったんだけど。

ちらりと松浦の方を横目で盗み見ると、強張った笑顔を作って変な汗をかいていた。
もっとばっちりがっつり叱ってやんなきゃここまでの俺様思考は治らねぇだろうと思うけど、頼りの担任があれじゃ、俺も意見する気力を失うってもんよ。

ふーっと肺から二酸化炭素をため息として吐き出す。固くなっていた体が柔らかくなったような錯覚を感じた。

「…良いよ。好きにしろ」



 


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