17/17



「だって、一条君が『北村と同じ部屋に住むことにしたからお前移動しろ』っていうんだもん!」

「『だもん』じゃね…って、はあ!?」
誠の気持ち悪さにはきちんと訂正を入れておかなければいけないと思い口を開いたのに、脳みそがその全文の意味理解した瞬間驚きの声を上げてしまった。
「な、なんで、一条が、」
「知るかよぉー俺は自分の住む場所追われたんだぞぉー?ったくしかたねぇあなぁもう。ほんっとワガママなんだから王道はぁー」
「…お前、うれしそうだな」
「へっ!?」
どうやらそのゆるゆるの表情筋の生み出す腹立たしい笑顔には気づいていなかったようだ。
「いやぁ、あはは、うん、まぁ、達也っ!」
「あぁ?」
そうしてこの幼馴染は強引に肩を組んでくる。口元をゆるめたままそれを俺の耳元に寄せた。

「頑張れよ、俺様王道の相手は大変だぞぉ?」

「それがわかってんなら、おとなしく引っ越しとかすんじゃねェよ…!!」
「ばっか、んなおいしい展開に水差そうもんなら、他の奴らに殺されちまうよ!お前だからいいの!平凡くん!!」
「あぁ!?」

いつの間にかこいつの中では『平凡』という言葉が褒め言葉に認定されてしまったらしい。腹立たしくも嬉々として俺の背中をばしんと叩いてきた。
("他の奴ら"…?)
他にも誠のようなアホが存在するとでもいうのか。考えただけでも恐ろしい。

「じゃあ俺もう行くな」
「え!?ちょ、ちょっと待っ」
この腐れ幼なじみに向かってこんな情けない声を出したことは今まであっただろうか。いや、ないと思う。でもいやだって、この野郎俺が目立つタイプの人間を嫌いだというのを知っているくせに俺と一条なんてのを同室にするなんてきっと脳まで腐ってしまったんだな。

「…何やってるんだ、邪魔だぞ誠」
「あぁハイハイごめんなさいねっ!!どきますどきますー!」
(マジかよ)
電話を終えたらしい一条が俺と誠の間に割って入ってきて、無理矢理に俺達の会話に終止符を打つ。

「とりあえずオレの荷物を出すから、手伝え北村」
「断る!」
「断る」
「……は?」
俺の拒絶の言葉が板にでもあたったようにそのまま返って来て、思わず眉を寄せた。

「お前が断ることを断る。手伝え。拒否権はない」

「………!」

神様、
俺なんか悪いことしましたか…?


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -