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「にしても狭い部屋だな、こんなとこで人間が二人もまともな生活できるのか?」
「…これから住まわしていただこうって場所で言うことか」
「すまん、素直な性格なもので」
適当な会話を並べるだけで彼は俺に苛立ちを贈り物として届けてくれる。
プルルルル、と甲高い音がした数瞬後、『電話だ』と脳が判断するが、ポケットの携帯は震えていない。誠もちらりと太もも辺りを一瞥するが違ったらしかった。
「なんだ」
(一条か)
俺でも誠でもなければコイツに決まっているというのに、なぜか胸の内でリアクションをとった。
「…あぁ、…だからそれは俺はいらないと…いや……」
今がチャンスだと思い、逃げ帰ろうとする幼なじみの肩を叩いた。
「――誠ぉ…」
「はいいっ!!」
震える彼の体。頬を伝う汗。…俺、そんな怖ぇ顔してんのかな。
「いやはやどうして一体全体なにがどうなってこんなことになってしまったのかわかりやすく要点だけまとめて俺に説明しろ」
「こ、"こんなこと"って?」
「わからないって?んなくだらねぇ嘘つく暇があるんなら言い訳でも考えろこの…腐れエロ魔人が」
「えろまじん!?ひでぇ!」
("腐れ"は否定しないんだな)
なぜだかひどく悲しかった。
「俺はエロくなくてもときめくんだらな!!スト重キャラ重だ、ばか!」
(知るか…!)
正直真面目に何を言っているのかわからない。日本語って、難しいな!
「っとにかく、なんで俺と一条の野郎が同じ部屋になる必要があんのか言え!」
「そりゃ、おいし…じゃなくて、あの、あれだよ」
"おいし"?
なにが?なにが美味しいって?わかんねーな、コイツは。舌まで腐ってやがるのか?ん?
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