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とりあえずは一つ目からだ。『どんなことでも手前にあるものからきちんと片付けていきなさい』と昔ばあちゃんに習ったのを思い出したよ。
「一条」
「ん?」
キョトンと目を丸くする。何だお前うぜぇ畜生綺麗なツラしやがって。イケメンなんか滅びればいい。美形爆発しろ!
「"達也"と呼ぶのは控えてくれるか」
全力で視線をそらしながら俺は言った。
「なんで」
(あぁそうだねお前ならそう言うと思ったよ)
「不快だからだ」
「だがオレは愉快だ」
(知るか!)
「とにかくやめてくれ!」
あぁ悔しい。悔しいったらねぇよ。口喧嘩でなくとも会話の中で"とにかく"を使うのは今までの討論を無にしてしまうということだから現時点での敗北宣言だ。あぁクソ、失敗した。
「…まぁいいだろう」
(く…っ)
いつまで経っても崩れぬどす黒い(そう俺には見える)笑みを睨みつけた。
「というか、ほんっきでお前と俺でこの部屋に住むのか…?」
「あぁ。」
「…なんでこんなことに…」
俺が一体何したっていうんだ。こんな仕打ちを受ける筋合いはねぇってのに。
「理事長にも校長にも寮監督にも許可は取った。問題は無い。」
「どういう気の迷いだよ。お前みたいなド派手な転校生が俺みたいな奴と同じ部屋に住みたがるなんて」
うなだれていた俺は顔を上げ一条を上目遣いに睨む。
「気に入ったんだ」
「は」
「感謝しろ。」
「……」
「うおおスーパー俺様タイムキターッ」
(もう…好きにしてくれ…)
「いいか北村」
「ん?」
「オレがお前を気に入ったように、お前もオレを気に入れ」
「……………」
いやぁ転校生さん、いくらなんでもそれは無理でしょう。
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