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「あー疲れた」
この言葉をため息のように吐き出して自室の扉を開ける。何度も繰り返されるこの行為に飽きてしまいそうだ。
…まぁ、一条の野郎が転校して来るまではこんなことなかったんだけど。
「…ん?」
うなだれるように足元を見下ろしていた俺は室内の異変に気づく。なにがおかしいって同じ部屋にクラス幼なじみがまだ居ないということもそうだけど、…その幼なじみ、誠の荷物が無い。
「なん、で」
(え…泥棒?)
そんな馬鹿な。もし泥棒なんだとしたらそんなにもセンスの無い盗みは即刻止めるべきだ。なぜって、あいつの荷物と言えば親から毎月送られて来る衣服と、安っぽいフィギュアと、肌色と桃色の表紙の本ぐらいだからだ。
(なに…あいつと同じ脳みそ退化した泥棒だったってか?ふざけんなよ名門男子高…)
声を出して読み上げるにはバトルマンガの主人公となるのと同等なほどの勇気を必要とするようなタイトルや帯に書いてある抽出されたセリフ。にやにやとしながらそれを夜中まで読んでるあいつはいつからああなってしまったのだろう。
(昔はただの馬鹿だったのに…)
今はさらなるオプションが乗っかっちゃってる。
「たぁーっつやぁ!」
「!」
友人の今後を真剣に悩みながら(まぁあいつがなにかしでかすと俺にとばっちりがくるからなんだけど、)扉の前で立ち尽くして居ると、数瞬前まで俺の脳内に住み着いていた腐れ馬鹿が現れた。
「誠…」
「どう?綺麗なったろ部屋!結構大変だったんだぜー業者さんが」
「業者かよ。…っつかお前荷物どこやったんだ?」
何が楽しいのか笑っているこいつに思わず突っ込みを入れてから我に返り本題へ進む。
「俺、この部屋出るから」
「…え」
「一条くんと仲良くやれよっ!」
「…………………………………………………………………えぇえ゛!!?」
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