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"沈黙"


一条と俺の間にはそんな名前の時間がながれた。

さっきまで俺と一条が会話をしていたとしたら最後に言葉を発したのは俺だから次は一条のハズなのだが。


・・・どうやら一条くんは沈黙を抜け出す気はなさそーなので、しょうがないから俺が止まった時間を動かしてやることにした。

「あのさ、」
「オレの父親はちょっとした会社の取締役なんだよ」

あぁ。俺がせっかく使ってやった気を無駄にしやがって。

「この学校にも援助してるからな…教師たちがオレにヘコヘコしてんのもそのせいだろ」

うーん。容姿端麗、頭脳明晰そのうえ裕福な家庭の坊ちゃんとなれば男としてはものすごーくパーフェクツ。

「ったく、どいつもこいつもくだらない」

…この残念な性格以外は文句のつけようがありませんね。はい。
「へ、へぇ〜」
心の中で やっぱり と思ってしまった自分を否定したくて驚きのリアクションをとってみる。

「いつものことだ」

さらりと言い放つ一条くん。大丈夫、奴は"いつも"の感覚が麻痺しているだけだからさ。

そう自分に言い聞かせてることが急に虚しくなったある日の夕暮れ。

どうやら俺はこの世で最もわかり合えない生物と関わりをもってしまったようです。


 


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