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「あ、教えてくれてありがとう」
ハハハ、なんて型にはまったみたいな笑い声を言葉の最後につけて言った立花さんはせかせかと一条が指摘した単語を消す。

(…あれ?)
くるりときびすを返した立花さんはすぐさま下を向いて、いまだ立ったままの一条に声をかけた。

「あ、りがとう、一条くん。すごいなぁ、驚いたよ。はは。」
「…」
ぎんぎんと立花さんを睨み続ける一条はなんだかすごーくおもしろくなさそうにイスに腰を下ろして、すぐ隣の席の俺にしか聞こえないほど小さく
ため息をついたんだ。

「………」
(変だ)

変なんだ。この状況は。
おかしいのは一条の俺様っぷりじゃない。コイツが変な奴なんだということはもうあらかた学び終えたから。
変なのは、立花さんが大人しく引き下がったこと。
変なのは、一条がつまらなさそうだったこと。
ここは名高い流星学園だ。いっくら立花さんがハイレベルな問題を持ってきたからといって、時折その問題をもともと知っていたかカンがさえたとかでズバリ答えを当ててしまう奴がいたりする。まぁごくごくまれに、だけど。
そのときはそれはもう悔しそうにしてから「私が高校生のときはもっと」とかなんとか嘘かホントかわからない昔の栄光を語り出したりしてた。それに、生徒達の前で馬鹿にされて黙っていたのだっておかしい。あんなへったくそな作り笑いを浮かべて誰に媚びを売ったんだろうか。
続いて一条。
俺にはアイツの脳みその作りはわからない。というかわかりたくすらないけど、人に厭味を言ってクラス中がそんな空気になって。あんまりイイコトじゃあないのかも知れないけど普通は楽しいもんなんじゃないのか?

(…変だ)
一条司。
アイツはやっぱり、普通の生徒じゃない。

 


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