ゴー…とエンジン音がする。車体が揺れる度痛みという名の信号を脳に送って来る体にうんざりした頃、窓の外に見慣れた建物が。
(やっと、ついた…)
やっと気まずい空気から解放される…と素直に喜んだ俺を許して欲しい。
外からみたら本気で城かテーマパークだなぁなんて今更なことを感じつつ、俺はそーっと体を起こした。
キッと軽いブレーキ音と共に軽く車体が揺れると、俺は眉を寄せた。体をずらして、たどり着くとすぐに扉に手をかける。
「…悪かった」
「!」
振り向いても、シートでほとんど隠された桜場の後ろ姿しか捕らえられない。
寂しそうに?
悲しそうに?
そう見えるのがただの錯覚だったらどんなに楽か。
「………」
(謝ったぐらいで許せるわけねーだろ…アホ)
だいたい、なんで俺が許さなきゃならないんだ。あんな酷い目にあわされた相手に優しい言葉をかける必要なんてまるで無し。
「…………」
沈黙。まだ何か言うかもと思って足を止めたままだってのに桜場は何も言ってこないばかりか体を動かそうともしない。
(なんだよ…何か言えよな)
俺がこのまま寮に戻っていいってのかよ。