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「…悪かった」
「………………………」
これで何度目だろう。桜場の謝罪を聞くのは。これで何度目だろう。桜場の背中を睨みつけてやるのは。
(立ち上がれねぇほど痛いなんて聞いてねーぞ…!)
後部座席に横になってぷるぷる震えている情けない生命体…とは俺のこと。
「…加減はしたつもりなんだが」
「これでかっ!?」
ため息混じりに言われた言葉が意外というかもーありえなくってつい大きな声を出した。
(いっ!…ってぇ…)
体に響く響く。…もう嫌だ。

「…無理するな」
「させたのは誰だよ」
「…………」
間髪入れずに言ってやると、桜場は黙った。
(あーもーなにやってんだ俺は…ッ!)
正直、そらまぁ最ちゅ…最、中もめっちゃくちゃ恥ずかしかったし死ぬかと思ったけど、今のが100倍くらい恥ずかしいっていうか、あん時は勢いがあったけど冷静になっちゃうと駄目みたいです。

(いっそ殺してくれ…)
俺が居るのは…後部座席。
(……さっき)
ここで、俺は
"好きだ、清水…"
"桜場…"

「…ッッッ!!!!」
かっと一気に体温が上がる。
(馬鹿か、思い出してんじゃねぇよ…!!)

ぎゅうと手を結ぶ。
「清水」
「………………」
さっきの出来事を出来るだけ無視しながら俺は寝たふりをした。
「………」
「…………」

車内は運転中、
ずっと静かだった。






 



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テーマ「人外ファンタジー」
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