37/59



「っ清水、オレの眼鏡外して」
「っ…めが、ね…ッ?」

俺が目を細くして問うと、彼は口元を歪めた。
「ん、キスする時邪魔だろ…?」
「なッ…っぁ!」
目を見張ったら腰を捕まれたまま、突き上げられた。右側に顔を傾けて桜場が唇を寄せてきた。触れ合うと、フレームがカシャン、と鼻にぶつかった。

「早く」
「っ」
なんかもう考えるのがめんどくさくなって、桜場さんの指示通りに震える手を眼鏡に添えた。
(…そういえば、眼鏡つけてない桜場初めて見るかも)
するり、と引き抜くと初めて見るフレームの外の黒に俺が映った。どくんどくん、と鼓動が走る。桜場が、眼鏡をしていて良かった。間に何も挟まない彼の瞳は、黒くて、深くて、あっさり捕らえられて
――きっともう逃げられない。

「っん…ッ」
気付けば口づけられていた。
「ん、ふ」
唇が離れる度に熱い彼の吐息がかかって俺が口を引いても追いかけられる。
汗でベタベタする体がぶつかる音が響いていた。桜場は、少し腰を引いて戻す。それを何度も繰り返していた。

「――うぁっ!?」
ある一点を突かれただけ。ゾクッと一際大きな電気が走って、俺の背中が勝手に浮いた。

「ぁ…っ?な、なに今…!」
よくわからなくて、怖くなった。ゴシ、と口元を拭く。
「……ッ」
桜場は無言のままもう一度そこを突いた。
「ッ、ぁうっ!は、…ぁっ、あ!」

情けなくなるくらい
泣きたくなるくらい
恥ずかしい声が出て、俺は夢中になって桜場にしがみついた。

「っぁ!さく、嫌だ、ぁ」
「ッ清水…!」

怖いけど
桜場の黒のジャケットの肌触りが好きだな、なんて変なことを考えた。今の桜場はいつもと明らかに違う。ぐしゃぐしゃになった髪とか服とか。汗まみれの顔とか。苦しそうなのに…嬉しそうで。

「っあ…!は、ッ」
「…どうしよう清水…幸せ過ぎて…死にそうだよ…!」
「!…ふ、っく…っッ、」
糖分多めの電撃が、爪先から頭のてっぺんまで。
一気に俺の体を貫いた。 

「っ、んぁっッーーーッっッッ!!!」
目をつぶって、真っ暗になった視界には、白い花火がチカチカ打ち上がっていた。





「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -