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「しみ…ず…」
「……っ」
ぱく、と口を開けると、呼吸がぴたりと止まった。

(うわ、っ)
肺を直接握られてるような圧迫感はだんだん強くなっていく。
「ぁ…はっ」
俺の意思とは真逆に、体はゆっくりゆっくり桜場を受け入れていって、耐え切れない痛みにぼろりと涙がこぼれた。

(痛い、痛い痛い…ッ!)
「ぁッ…や、さくら、ば、やめ…ッ頼む、から…っあ」
がくがくと体中が震えて、歯がガチガチ音を立ててぶつかった。
「っく、ぃ…ッ」
もどかしくなって歯を噛み締めると、体に力が篭って一層桜場に与えられる痛みが大きくなる。

(もう嫌だ…っ)
「ぁ…ぅく、っ、ぁ」
「清水…っ」
はぁっと甘くため息をつくのと一緒に名前を呼ばれて、ぶるりと体が震えた。
「…ッ痛い…って、抜け…よ、っぁ…ぅ…ッんぁ…」
言葉が言葉にならなくて、ビクッと体が揺れると目尻から透明な液体が落ちてシートに吸い込まれた。

「さく…らば、お願っ」
こんなに痛くて苦しいなら、負けを認めてしまおうと思った。お願いだからやめてくれなんて、情けないことを言おうとした。――――なのに。

「……好き」
(え…っ)

乱れた熱い息の中で、確かめるように 嬉しそうに 耳元で囁かれた。

「好きだよ、清水…」
するり…と指と指の間に桜場の長い指が入り込んできだ。ゆらゆら目を揺らしながら、ぼろぼろに泣きながらみつめる俺の手の甲に、ちゅ、とキスを落とした。

「愛してる」
「っな、…うぁ」

桜場が、俺の奥に入って来る。
「ぁ…っ!」
「……好きだ」
「ん…っ」
「好きだ…清水が…お前が好きなんだ…」
「ッ…!」

なんでだよ。拒むことしか考えてなかったのに、

「――…もう、誰にもやらない……」
「っ…はぁ…ッ」

体が勝手にコイツを受け入れようとするなんて。




触れ合う部分が、
熱くて、火傷してしまうんじゃないかって。少し怖い。

「っ…さ、く…らば…ッ」
チカチカ、光る。
「っだから、呼ぶなって言ってる…だろ…ッ」
「ぁ!…待っ、ぅあッ!…も、はい…らなっ」
背中に回された手が、俺の腰を固定して。

「っは…清水」
「んッ…は、」
(息、出来ねぇ…っ)
「全部入ったの…わかるか?」
「っ、知るかアホ…ッ」
くちゅる、と柔らかい舌が俺の耳の穴の始まりをくすぐった。
「息、吐いて…力抜け」
「っは、ぁ…はぁ、あ…っ…はあっ」
桜場、の
桜場の、が
(待て待て待て!!考えるな考えるなっ!!)

どうしたって意識してしまう繋がりを、俺はぶんぶん頭を振って拒絶した。チュ、と額にキスを落とした桜場は、
「……夢…じゃないんだな」
囁くように呟く。
「っ、こんな…夢、見てたまる…かっ」
恥ずかしくて震える体。一番見られたくない相手が目の前にいる。

「オレはしょっちゅう見るけど…」
「っは!?」
「…夢の中の何倍も…今のお前は可愛いよ…」
「な、…うぁっ!?ぁ、ぅご…っくな、馬鹿、桜場っぁ、ア…ッ」

彼は少し腰を引いて、また、深く俺を突く。ずぐっ…ずく、なんて恥ずかしい音が俺をおかしくする。車体が悲鳴をあげるのも聞かずに、彼は俺を抱きしめる。彼の髪の毛が俺の頬を撫でて

カチャリ、と黒ぶち眼鏡が揺れた。


 



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