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「やめ…っも、嫌…だって…っくぁ…!」
「…大丈夫…よくしてやるから」

ずぶずぶと波を立てるように指をくねらせながら、割り入っていく。
「待っあ、ぁ」
長い人差し指の先が、クリッとそこにあたたった。それだけで
「ぁ、は…っ!!」
ぞくんっと激しく背中が粟立って、背中が浮いた。

「くす……ココか…」
「な…っ、そ、そこ…っさわんな…っぁ…!」
執拗にそこを刺激されて、体が跳ねた。くらくらする。もうここがどこなのかも忘れた。

俺が知ってるのは、
ふたつ、だけ。

「清水…大丈夫か?」
耳元に彼の吐息がかかる。熱い。熱くて溶けてしまいそうで。そんな声で、呼ぶなよ。

「っは…大丈夫なワケあるか…っ馬鹿…ヤ、ロ…っ」

涙と汗でぐちゃぐちゃになった目で、上目遣いで睨んでやる。ツー…と頬を伝って、雫が口の中に入った。しょっぱくて、まずい。
「……ッ」
桜場は、いつもする余裕こいたような笑顔じゃなくて、歯を食いしばって、口元を吊り上げて
ぎらりと怪しく、瞳を光らせた。

ずるり、と指が引き抜かれる。

「っん…ぁ…っ!」
そんな僅かな刺激にすら恥ずかしいほど反応して。

「はぁ…っはぁ…」
さっきまでの強すぎる刺激からは考えられないような沈黙。なんにもされない時間。

(くそ…っなんだ、これ)
トサリ…と、あまりにも優しく押し倒された。窓から差し込んだ光が、桜場の体で遮られた。俺の足の間に彼が座って、体を倒して
唇を重ねられた。
2人の胸が合わさる。

(心臓の音、すげーな)
俺が知ってるのはふたつだけ。強い強い鼓動が、桜場のものだということ。
彼が、俺を求めている

ということ。



カチャリ
――と金属物が触れ合う音がした。それは俺の体の下のほうから聞こえてきていて、

(まさか、)
俺の目が桜場の手を捜し当てると、彼は自分のベルトを外しかかっていた。
(――――ッッ!!?)

「ん、はぁ…ッ待っ…桜場、…お前っ」
桜場の広い肩に手をかけてグイッと押し返した。キスを終わらせて、彼の名を読んだ。

「待てない」
ぐぐ、と桜場が体を前に倒すと力の入らない俺のひじはかくんと曲がって、桜場の吐息が口元にかかった。ぞくっ…と背中が冷えた。それなのにくらりと顔が熱くなった。
「や、駄目、だっていってんだろ…ッ」
ごそごそと布が擦れ合う音がして、見えないのに桜場が自分の服を脱いでいくのがわかった。

(やだ、嫌だ…っ)
「さく、桜場…ッ」
どうしたら止めてくれるんだろうかと、必死にアイツをよんだ。肩が震えるのを感じながら、少しだけ期待した。あれだけ好きだ好きだ抜かすんだから、俺が本気で嫌がったら、――やめてくれるんじゃないかって。

「ッ清水…怖い…か?」
「っ、」
("怖い"?)

すり、と自分の左頬と俺の左頬を合わせて、耳にちゅっと口づけをした。桜場の黒髪がさわさわとくすぐったい。"怖い"って、俺が?
それを肯定するのは、負けを認めるのと同じだ。

「っちが、怖くなんか」
「じゃあ大丈夫だな?」
「な、っ!?」

クス、と笑いながら桜場は俺の手を自分の肩からはずさせて、手首をシートに押し当てた。
「ちょ、――っ!」
あてがわられた熱を感じて、俺の心らしきものは正直に認めた。

(――怖い…っ)


 



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