目を開けると見慣れた風景がそこにあった。
(何時だ…?)
寝癖がついた頭をかきながら枕もとにある携帯をみた。ちかちかと光る液晶画面には”2:38”と表示されている。
(…2時かよ…)
昨日は寝付きが悪くやっと寝入ったのは12時ごろだった。眠れなかったのは言うまでもなくアイツのせいだ。
桜場光一…
いつもは嫌みなくらい冷静なあの男が明らかにおかしかった。
(なんか…あったのかな…まー俺には関係ねぇけど)
アイツがおかしいとこっちまで調子が狂ってしまう。そんなふうに物思いにふけっていると
「んごぉおお」とこの世のものとは思えないいびきが聞こえた。
いつものことで慣れてはいるんだけど、今日はなんだかすごくうっとうしく感じて右足で上のベッドの底を蹴った。すると
「んごっ」という声がして静かになった。
(ったく…早く3年になりてーもんだな)
俺は小さくため息をつき、ゆっくりとベッドからおりた。カーペットがふかっと俺の足の裏を撫でる。
(ーはぁ…アホのせいで目ェ冷めちまった)
どうせ眠れないし、後藤は起こすとうるさいから部屋を出て寮内を散歩することにした。足音に気を配りながら室内を歩く。
ゆっくりと扉を開けて部屋を出た。