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(これってこのままいくのか!?ふざっけんなっ!!)
「ぅん…っん…っッん…!!」
脇腹辺りをくすぐりながら、桜場の手の平は俺のTシャツをめくりあげていく。それがすごくとってもかなり嫌で、俺は必死に桜場を押し返そうとした。けれど胸の辺りをぐいぐい押そうが、腕をつかんで力をこめようがなんか知らんが力はあきらかに桜場のが強くて、どうあっても逃げられない。
その様子を見下ろして楽しそうに口元をゆがめながら、桜場は俺の舌と口腔の中を掻き乱していた。

「っん…はぁっ、ぅん…っ!」
密着した部分から、桜場の熱はどんどん広がって、ゆっくりゆっくり俺を飲み込んでいく。頭の中はぐつぐつ煮えたぎって、俺の理性をドロドロに溶かす。一瞬口を離すと、興奮しているらしい桜場の黒くて深い目がぎらりと光って、熱い吐息が鼻先をかすめて

(おーおーなんつー顔してんだよ先生ぇ)
くらっと視界が揺れた。
(俺…だから…なのかな)

「ん…っ!」
胸のところを指先で押されて小さく声がこぼれる。そのまま右手の人差し指と中指に挟まれて、自然と肩が跳ねた。

(どっ…どこ触ってんだよこの野郎…ッ)
睨んでやってもアイツは微動だにしない。

(俺だから?)
桜場は俺になにを求めていて、俺と何がしたいんだろう。ふと浮かんだ小さい小さい疑問は、一瞬一瞬膨張して
でっかくなって
口から溢れた。

「……お前…は、こんなことしたくて俺を連れてきたのか」
「…は?」



 「っ…あ、のな…ッ…俺、は…男なんだよ…っ」
「……何だ、今さら」

そんなこと、重々承知だが…と桜場は低い低い声で言った。

「…っ…こーゆーことすんなら、かわいい女の子としろよ。」
「は?」
「どーしても男としたいんだったら他あたれよ!!」
俺の声は僅かに響いて、それでもすぐに溶けて消えた。長い一瞬の沈黙のあと、彼は口を小さく開いた。「………本気で言ってるのか」
「え…っ」
「オレが他の奴にもこんなことをすると本気で思っているのかと聞いたんだ」

桜場の地を這うような低い声が俺の心臓を大きく揺らす。

「し、知らねーよ」
「それは絶対に無い。…オレはお前以外に触れたりしない。」
「っ!」

はっきりと答えた桜場の言葉が俺の頬を熱くする。
(即答かよ…っ)
「…ど、どーだか…っ」
どくんどくんと爆走する鼓動は、たぶん桜場にも伝わっている。聞こうと思えばプロポーズにだって聞こえる桜場の言葉は、俺の体を見えない何かで縛り付けて拘束する。――逃げられない。長い長い指が、俺の唇をなぞる。


「…今から
証拠 見せてやるよ」


 



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