27/59



下の方までゆっくり下りていったその手は、当然のようにTシャツに下から侵入して腰に触れた。

「ちょ…っわ、わっ 」
これはやばい。と気付いて抵抗をはじめようとすると、ぐぐっと桜場が上に被さってきて、ぱたっと横向きに倒された。

「ま、待て おいっ」
「…何だ」
右肩をシートに押し付けられながら、首を左にひねって桜場に抵抗。この野郎は不思議そうに眉を寄せやがった。

("何"じゃねーよ!!)
絶対に
確実に
正しいのは、俺。

「や、だからっ わっ ちょ、どこさわってんだ、どけよ!」
俺の言葉なんて当たり前のように無視して、右手が背中をくすぐるように撫でる。ふるるっと体が震えた。ぐいぐい押されてTシャツが上がっていく。肌が直(じか)に触れると、ザラザラしたシートが軽く擦れて少し痛かった。もぞもぞと体をひねるたび、汗がじんわりと出てくる。

(あ…っ)
「…っま、待て、さわんなって!」
「は?」

手足をばたつかせて桜場をどかそうとする。ばちっと左手が桜場の頭にあたって、「痛い」と低い声がした。

「なんだよ」
「いーからやめろって!冗談でもっ」
ぶんっと大きく右手を振ると、それをあっさり桜場がつかみ取った。体を倒して顔を近付けて来る。ぴったりと俺の左手と桜場の胸が密着して、低い声が生む吐息が、俺の前髪を揺らす。

「……冗談なわけあるか馬鹿。二人きりになった時点でこうなることはわかってただろうが」
「なっ……………………………それは…………」
なんでもっとちゃんと考えなかったんだ自分…と自己嫌悪する。
「だ…って、今日、なんかあつ…いし、車…が」
「……は?」目を伏せながらぼそぼそつぶやく俺に、桜場は眉を寄せた。

(うぐぐぐぐ…っ)
羞恥で左手を握りしめた。
「清水」
「……よ、寄るなって」
(は、離れろよ…っ)
心臓がびりびりする。
「……もしかして汗かいたから嫌だ…とかだったりして」
「!!!!な、だ、誰が…っんな、ありえねー…っ」
(そんな、『汗くさいから嫌っ』とか女みたいなことを、この俺が思うわけねーだろーが!面白い冗談ですねぇ〜……あははのは。)

顔が熱いのは、決して決して決して図星だったからとかではなくて、気温が高めだからです。それ以外は認めない。

「……清水」
「寄るな離れろどけ失せろ消えろさようなら。」
シートに向かって吐き捨てた。
「…………あーー……………清水……それ反則。」
くすくす笑いながら、
「な、っん、んンっ…」

俺の声は桜場に食べられた。


 



「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -