「っ!!」
いきなりいろいろありすぎて目を見張ることしかできない俺の口をこじ開けて、桜場は長い舌をからませてきた。
「…っ!?ん、っ」
驚いて逃げるようにした俺の舌をからみとって、貪るように噛み付くように荒々しいキス。
「ん、んん…っ!!ん…!」
握りしめた拳を、ドンドンと桜場の胸板にぶつける。
(ドア、ドア開いてるって!!)
心でどんなに叫んでも、聞こえるはずがなかった。
「…はっ、っん…ッ」
苦しくなって口を離しても、桜場はすぐに唇を寄せてきて一瞬酸素を取り込むことしかできない。シートに押し付けるようにされながら、桜場の腕をつかんだ。
「っ…!」
力がうまく入らなくなった手で桜場のジャケットにシワを作る。小さく桜場の口元が持ち上がった気がして余裕がない自分が悔しくなった。反応を楽しむみたいにキツく舌を吸い上げられると、
「んっ!」
ぴりって頭のどこかで弱く電気が走った感じがした。その余韻なのか、桜場が体を起こし口づけを終わらせても、手には力が入らないし頭もじんじんした。
俺はシートに張り付くみたいになっていた背中を持ち上げた。
「は、はぁ…っ……お前、何考えてんだよ…!誰かにみられたら…っ」
息を整えるために肩を上下させながら睨みつけると桜場は俺をじっと見つめながら言った。
「付近には誰もいなかったから大丈夫だ。……むしろ駐車場まで襲わなかったことを褒めて欲しいくらいだな。」
「はぁ!?」
(なに言ってんだコイツ…っ)
手で奥につめろと指示されて、腕を使って体をずらす。桜場は俺の左側に腰を下ろしてドアを閉めた。ぼんやりそれを眺めていた俺の頬に右手を沿える。桜場の手が冷たい気がしたけど、それと同時に自分の顔が熱くなってるのがわかった。
「……お前にあんな顔されたら、理性なんか持たない」
「な、」
「耳まで真っ赤にして……手だけじゃ物足りなかったんだろ?」
くす、と笑いながら右手の指で頬を撫でる。くすぐったくて片目をつぶった。
「…ばっ、馬鹿なこと言うなっ!!あ、あれは」
「"そんなに嫌じゃなかった"んだろ」
違う!と言うはずだったのに、桜場の右手がするする下りていくのに目を奪われて、
否定の言葉はでなかった。