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……どこに行くのだろう
出発してから1時間は経過している。それに、どんどん人気の無い細い道をたどってるような…
(怪しい所とかは…行かない…よな…?)

「あのー…、どこ向かってるのか教え」
「着いたぞ」

見てみると、そこには
『ラブホテル艶』
と書いてある看板がー…
「いやいや!!ダメでしょ!?」
「は?何叫んでんだ?」
「そりゃ叫びますよ!?だって初めてのデー…がここって!!」
(俺まだ未成年だし!!)
「そっちじゃない。右だ」

言われて首が自然と右を向く。
『シネマ山吹』
…………
(映…画…館…?)

外見は随分と古くなっているように見えた。
「えー…と、あー…」
(だよな!!さすがにラブホなわけねーよな!!よかったよかった!!)

「清水、こういう所でヤりたいのか?」
「…!違ぇよっ!!!!」
桜場がニヤリ顔をするからなんか負けた気になった。
「清水がもっと大きくなったら連れてってやるよ」
…!
(…っ、この男は!!)
「ほんとに違うんだからな!!!!」

それからしばらく桜場は嬉しそうなままだった。



 
「…なぁ、なんでこの映画館なんだよ」
数歩前を歩く桜場に声をかけると、ボロ…ずいぶんと昔から使われていそうな映画館に全くもってあわない黒スーツの男は、振り返って答える。

「……なんだ、嫌だったか?」
「…いや、べつに…なんでもいいんだけど…さぁ」
桜場から目をそらして口を開く。本音を言うのは忍びなくて、俺は口を尖らせた。
「………」
(だって、映画はまぁベタだしわかっけどさ、普通、デー…っとか言うんだったら、もっといいトコ連れていこうとか思わねぇのかなー…とか、さ…べつに、べつにがっかりしたとかそーゆーのじゃねぇよ!?俺はデー…とかそんなつもりじゃねぇからどこだろうと関係ねぇけどっっ!!!!)

「……………っ」
顔が熱い。変なこと聞くんじゃなかった、と後悔。俺の様子をみた桜場は、口元を持ち上げ笑った。

「オレとお前は教師と生徒だろ?人が多い場所に行けるわけないだろう」
「…あ、そっ…か」
俺は桜場の言葉に思わず声を漏らした。

(そんなこと全然考えてなかった…)
アイツは
きちんと
いろんなことに気を配ってるっていうのに
俺は自分のことしか考えてなかった。

(…恥ずかしい)
「…ごめん」
「…?なんで謝るんだ」
「だ、だって さ…」
右下に顔を向けて、言葉をつなごうとしたけどうまくできなくて

語尾がにごった。



 



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テーマ「人外ファンタジー」
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