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一応、教師と生徒が2人で出かけるんだし

…みつからないほうが良いことぐらいわかる。
「はぁ…はぁ」
そのため、俺は寮室を出てから走り続けている。
何度も言うように、流学(流星学園)はめちゃくちゃでかい。人通りの少ない道を選びながら来たもんだから思っていたより時間がかかった。

「…だーから、ここはいったいどこの国立公園だっての…」
2日に一回は見かける植木屋さん整えられたでっかい木。木、木、木。チカチカするぐらい鮮やかな花が敷き詰められている。…あと…湖…に、噴水…?必要性は…?

(男子校だよね?ここ…)
クリーム色のタイルでできた道をかかとをならしながら歩く。
(無駄金ってこういうことをいうんだなぁ…)
ふぅ、とため息をつく。

「清水」

どきんっと心臓が力強く脈うった。
(う、ぅぐぐ…っ)
ぶるぶると全身が震えた。なんだろう、この感覚。
なんていうか、変。

「…清水?」
気持ち悪いっていうか、ムズムズするっていうか…
「清水」
あいつに名前を呼ばれると、きゅぅうーって、変な感じがして。

(なんだろうか…これ。)
「清水!」
「うるっせーな!!何回も呼ぶなっっ!!!!」

俺は振り返りながら叫ぶ。桜場は俺の勢いに押されたのか、左足をジリっと一歩引いた。
「―っなんでキレるんだよ。無視したお前が悪いんだろう!!誰かに見られるとまずいんだぞ!?」
今度は俺が桜場の勢いに押される。

「べ、別に無視したわけじゃ…ってお前なんでスーツなんだ!?」

俺は目を見開いた。いつもとかわらない黒いスーツ。水色のシャツにネクタイは青のストライプ。

(休日に出かけるっていうのに…なんでスーツ!?)
「…は?なんでって当然だろう。デートは正装で行くものだ。」
桜場は首をかしげ、そう言い切った。
「ちげーよっ!!なんで、だって私服…っ」
「―何を言って…あぁ、そういうことか」「…は?」
桜場はフッと笑った。

「お前、オレの私服姿がみたかったんだな。」
「なっ…ちがっ」
かーっと顔が熱くなった。悪かった悪かった、と俺をなだめるように言いながら桜場は歩いていく。どうやら車へ向かうらしい。
(あーくそ、むかつく…っ)
俺は桜場の背中を睨みながらついていく。…やっぱり嫌いだ。

(…!)
桜場のものらしき車が視界に入った。俺は車に詳しくないからよくわからないけれど、綺麗だし新しそうだ。…そして、色はというと。
「…桜場先生」
「なんだ急に」
「…あなたは黒が好きなんですか?」

ぎらーんと黒光りする桜場の愛車は、なせだか持ち主そっくりにみえた。
(車も…買い主ににるのか?)
「黒…か。特別好きというわけじゃないが…なぜかいつも黒を選んでしまうんだ。」
俺のくだらない質問にも真面目に答える姿がなんだかおかしい。俺がドアの前でつったっていると、すでに運転席に座っていた桜場が声をかけてきた。
「…清水、はやく乗れ」
「あ、は、ハイ…」


 



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