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「はぁ〜…めんどくさ」
そう口から漏らしながら向かっている先は数学準備室。廊下から教室に掛けてある時計を覗き込むと、短針は6を指していた。
普通なら寮に戻っている時間だ。辺りは薄暗く、当然人影もない。
(反省してるふりしてさっさと終わらせよう。)
そう思いながら数学準備室の扉に手をかける。
「失礼しまー」
「遅かったじゃないか」

言葉を途中で遮られたことと、桜場の反応のはやさに驚きつつも言葉を返す。
「遅れてすいません。それと、わ ざ わ ざ 呼び出して下さってありがとうございます。」
嫌みったらしく言ってみた。
「喜んでもらえたなら良かったが、オレはてっきりお前が来ないつもりなんじゃないかと思ってな。」
向こうも嫌みったらしい微笑みで対抗してくる。心底、俺はコイツが嫌いなタイプであることを確信した。

(…っと、ケンカふっかけてる場合じゃなかった)

「えと、先生、昼間は失礼しました。あの、数学が嫌いってのは別に数学の良さが分からないとかではなくてですね…」

「清水、オレのことは嫌いか?」
「………………は?」

俺の耳は一体どうしたのだろうか。明らかにこの場に…というか俺の人生に相応しくない問いが投げ掛けられた気がする。

「…いや、…お前、数学の時だけ授業態度悪いだろ?それがわざとなんじゃないかと思ってな。」
「いや、それは…」
(何だ?またなにか嫌味言う気か?だったらもっとまともな質問にしてくれよな…!)

「…まさか、オレの気を引こうとしてる訳ではないよな?」
ぞくぅっ 背中が冷えた。(え、え)
「先生何言って…」
笑えない。うまい返しが見当たらない。どうしようか。ほら、先生が面白おかしい冗談を提供してくださったんだから俺もそれに答えなきゃいけないだろ?

「オレに気がある…とかないよな?」
「…っ」
軽く笑みを含んだ、ちゃかしたような言い方。
だけど、…目が笑ってない。「っ先生、お、俺ちゃんと予習しとくんで、今日はもう帰ります!」
扉の方を向き、逃げるようにして部屋をあとにした。戸を閉める瞬間に桜場が何か言いかけた気がしたが
そんなの聞いてられる余裕はなかった。
(なんだよ!気があるって!意味わかんねーよ!!第一、俺とアイツは男同士じゃねーか!!)
気がつけば俺は走り出していた。
時計の短針は7を指しており、あれからちょうど1時間が経過したことを示していた。



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