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…天罰だとしか思えない。

「…何なんだよデートって…!!!!」
俺は寮室のベッドの上で枕に顔をうずめていた。
(…だいたい。普通はもっと恥ずかしそうに言ったりすんじゃねぇの…!?)

どうしてあんなにもはっきりと『デート』なんて単語を使うんだ。

(てかさ、てかさ!!)
人生で初めてのデートの相手が教師でしかも
(おっ…おと、おととと)
男…なんて絶対おかしい。
(…けどしかたねーじゃん。…反省文のかわり…だし)
そんな風に非現実的すぎる未来に言い訳をしながら。なぜだか異常に明確に想像できてしまう俺と桜場のデート姿に俺は小さくうなった。
「ん゛んん…」
(………………洋服……どうしよう……………)
むくりと起き上がって
最近全く使っていなかった私服が詰め込まれたダンボールの前まで歩いた。ため息をつくのと同時に腰を下ろした。

(めんどくさいなぁ……ほんとに、めんどくさいんだよなーうん。…でもあいつは、俺と。俺とデートしたいみたいだから?しかたないよなーっ)
キュキュッとかビビーッみたいな独特な音をたててダンボールが開く。赤とか黄色とかカラフルなTシャツが敷き詰められている。ふと、小さな疑問が頭をかすめた。
桜場はどんな格好でいくつもりなんだろう。…そういえばあいつはいつもスーツをバシッと着こなしているもんだから、私服なんてみたことがない。…全寮制で1年間。一度たりとも…だ。桜場の異常さに汗が出る。

(…そういえば、俺はあいつのことなんも知らねーよな…)
誕生日?血液型?好きな動物?嫌いな食べ物?…何もかも。
(知らない)
俺が知っている桜場光一はあいつ自身の一部でしかなくて。

(なんで…別に気にするようなことじゃないだろ)
知っていることより知らないことのほうが多いんじゃないかと
(知らなくて当然だろ…?知らないのは俺だけじゃねーし)
後藤も、長谷川だって
(…あれ)
…梶原は、知っているんだろうか。
「……っ」
(なんか仲良いみたいだったし?…別にどうだっていーけど)

「あーそうだ!!はやく洋服選ぼー!!」
掻き消すようにわざと大きな声をだしてダンボールの中からTシャツを引っ張りだす。
(デート……になんか期待するわけじゃねーけど)

1日外に出て一緒にいれば
少しくらいは近づけるだろうか。堅物で謎だらけの…あの数学教師に。


 



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