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─昼休み。
俺は数学準備室に向かっていた。あのあと、予想通り桜場から注意を受けた。特に叱られたって訳じゃなくて。ただ一言、
『昼休み、数学準備室に来い。』
と言われた。
その時の桜場は、うつむいて周りにバレないようにはしていようだったけど、確実に俺が想像していた通りのニヤけ顔をしていた。絶対に何かされる。そう、俺の本能が警報を鳴らしていた。


その警報を無理矢理止めて俺は準備室の戸に手をかけた。

「遅い。」
中には当たり前のように桜場がいた。
「先生、今朝はすいませんでした。反省文書いてくるんで紙下さい。」

また何かされてはたまらないと早めにこちらから用件を切り出した。まあ、思い通りに行くわけもなくて。

「清水、お前、明後日の日曜日は暇か?」
「……」

この質問を聞いて、ある単語が浮かび上がった。けれど、
(いやいやそれはねーよ。)
それだけは無い、というか考えたくなかったからというか…とにかく頭の中で、その単語の可能性を否定した。

「…暇…ですけど、反省文書くことになると思うんで、多分忙しくなります」
(さっさと紙よこせよっ!!)
「そうか。それなら日曜午前10時に出掛ける準備をして
校舎裏に来い。」
(―…はい?)

『絶対に無い』
さっき否定した単語を
もう一度、『無い』と頭の中で確信してから、自分を安心させるためにも桜場に確かめることにした。

「…先生、もしかしてもしかすると…デート…ですか?」

(なーんちゃっ…)
「そうだが?」
(―て、え?)

さも当たり前のような反応をされ、俺はリアクションに困ってしまった。

「あのー…先生、俺、反省文がぁー…」
「デートに行くから書かなくてもいい」
「……は?」
「デートするんだから、そんなもの書く暇ないだろう?」
どうやら、俺が『デート』に参加することは決定しているらしい。
「………」

(……もう…逃げられないんでしょうか)

あぁ神様。
これは、反省文を書かなくてもいいというご褒美ですか?

それとも
天罰ですか?



 



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