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後藤は俺の肩をつかんだまま、長谷川を睨んだ。顔が赤くなっている。
「わかってるって!!だからおもしれーんじゃんっ
極道って!!ごくどーっ!!」

(………)
「ぷっ」
後藤は、ぐりっと首を回し今度は俺に視線をやった。
(ごめん後藤)

よく週末にやってるスペシャルドラマのように日本刀を振り回して人情を守る桜場を想像してしまったら
(…仕方ないだろ!!)
「あははっ!確かに極道はねーよなっ…はははは!!」

俺は後藤から離れて腹を抱えて笑った。長谷川の笑い声と俺の笑い声が混じりあって響く。

「ひっでぇな2人とも!!
俺は清水のことを心配して言ってんのに」
「わかってるって」

ふて腐れて口を尖らせている後藤に声をかける。
「サンキュー後藤。でも本当になんでもないから気にすんな?」
ニコッと笑ってなだめるように肩を叩く。

「…そーゆーの。」
「え?」
「そーゆーさ、当たり前みたいに嘘つくのが気にいらねえんだよ。」
後藤は俺の手を振り払ってしまう。
(…やば…怒らせた…?)
「う、嘘なんか、ついて…な」
「―もういい」
(どうしよう
後藤が本気で怒ってる)

「ご…後藤?」
おそるおそる、背中にむかって声をかける。
「……」
後藤はぴくりともしない。振り返る気配すらない。伸ばしかけた手を…下ろすしかなかった。
(……っ)
怒らせたくて嘘をついたんじゃなくて『なにもない』以外表す言葉がみつからなくて
(…後藤がホントに心配してくれてるのはわかってるんだけど)
だったらなんて言ったらよかった?俺と桜場の愛だには何があるんだろう
『生徒と教師』
それ以外しっくりあてはまる言葉なんてみつからない。
『いやーそれがさ、桜場先生にキスされちゃってー。告白までされたんだよー。この前なんか抱き合っちゃってさぁ、今日はまたキスされちゃってぇ』
…なんて
(言えるわけねぇだろうが!!!!)
「―…っ」
「ごめん」
「―え…」
足元に視線を落としていた俺は、突然の謝罪の言葉に顔を上げた。背を向けていたはずの後藤がまっすぐこっちをみつめてた。
「ごめん…清水」
目を伏せて頭をガシガシとかく。
「違う…ちがくて。…清水を困らせたいんじゃねーんだ。なんつったらいーのかな」
(…え?)

なんで後藤が謝ってんだよ。…悪いのは、嘘をついた俺なのに…戸惑いをはらすために長谷川に視線を送った。『俺はどうしたらいいんだよ』と目で話かける。
長谷川は俺を見てため息をついた。右手の人差し指を後藤にむける。
『渚をみてろ』
と目で言った。
長谷川の指示に従い後藤を改めてみると、にかっといつもみたくばかみたいに明るく
「清水が言いたくないならいいやっ」
と笑った。

(…お前が嘘をついてどうすんだよ)


 



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