2/34



聞き慣れたチャイムが鳴った。後藤は右手を天井にむかって高らかに突き上げて伸びをする。
「ん〜っ!っは…やっと授業終わったァ」
体中からかき集めた酸素を吐き出しながらそう言った後藤は、嬉しそうにふふっと鼻を鳴らす。それから俺の顔を覗き込んだ。
(…近)

せっかくガタイもよくて男らしいのに子供のようにニヤニヤ笑うからアホっぽさに磨きがかかる。

「…んだよ。気色悪ィな」
俺は顔を右に背けた。
「何って放課後じゃーん!桜場先生とマンツーマンのお勉強会っ!早く行かなくていいの?」
にかにかと無駄に明るく笑いながら白い歯を見せ付けてくる。
(ッ…人の不幸を楽しみやがって…!)
「いーんだよ。あんなのその場限りの冗談に決まってんだろ。真に受けてんじゃねーよ。」
俺がそう吐き捨てて、
「さっさと寮行こうぜ」
と言いながら立ち上がった直後、ピーンポーンパーンポーンと明るいメロディが校内に響いた。
次いで、あの男の声。
『2年3組清水蓮。さっさと数学準備室に来い。』
「!」
もう1度明るいあのメロディが鳴ってお知らせは終了。
「…っ」
言葉も、出ない。
(たかが嫌がらせで…ここまでするか?普通…どんだけ嫌われてんだ俺は)
ぐるぐると黒いのが胸の辺りを這うのを感じる。気づけば俺は自分の足元をじっとみつめていた。
顔を上げると
「いってらっしゃい。しーくんっ」
と後藤が笑った。
(しーくんて誰だ)
その数瞬後、
怒りと憎しみがのった右拳が、後藤の左頬に吸い込まれる感触がした。


―あ、ゴメン。



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -