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「きっキレてねーよ!!」
俺がそう返すと、2人とも黙ってしまった。
「………」
「…………」
(…なんだよ…)
しびれを切らした俺が、口を開けた。

「―俺!!…桜場んとこ行ってくる。…用あるみたいだったし…!!」
沈黙に堪えられなかったというのも事実だが、桜場のことが気になっていたというのも本当だった。
俺は小走りで机の間をすり抜け、扉の前で足を止めた。
(なんというか…)
2人…後藤と長谷川の視線が痛い。俺がためらっていることに気づいたのか、長谷川が念を押す一言を放った。
「はやく行けよ。」
「…!!い、行くよ!!」
ガラッと勢いよく扉をスライドさせ、職員室のある左方向に体を向けようとした瞬間――

「遅い。」
「え!?」
桜場光一が、すぐ隣で壁に寄り掛かっていた。
「お、お前、まさかずっと聞いてたのかっ!?」
思わず左手で指をさす。
「オレが無理矢理連れていくことも出来たが…それじゃあフェアじゃないだろう?…お前にも選択権をやらないと。」
腕を組みながら桜場は嬉しそうに言った。
「…っ…ッ!!」
あまりに予想外の出来事に、俺はぱくぱくと口を開け閉めした。
「…行こう。」
桜場は大きな手で俺の手首を包みこみ、引っ張って俺の体を動かした。
「行くって、どこにっ」
「…さぁ?」
(なん…で 俺はおとなしくついて行ってんだよ…っ)

嫌なら逃げてしまえばいいのに、なぜだか桜場の手を振り払う気にはならなかった。

 



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