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「…なんだよ。随分アッサリだな。」
長谷川はため息をついた。

(…なんだよそれ…いーけど!!別にどーでもいーけどさ!?)
俺は右拳をにぎりしめた。
(だいたい、お前が…!!)

「まぁー…いーじゃん、桜場なんかさぁ」
後藤は俺の機嫌をよくしようと明るく話しはじめた。
「…だな。アイツウザいんだよ。しゃべりかたとかも。」
長谷川がそれにのっかった。いつの間にやら悪口大会になっていた。
「……」

(…なんだよ…後藤も長谷川も、…知ったような口ききやがって…)
アイツは
「つーかアイツ寮でもスーツだろ?みてて暑苦しいんだよな。」
(…それの何がいけないんだよ…真面目ってことだろ…)
「ああ、そうそう。あと自己チューだしな。」
桜場はな
(…なんでだよ。ちゃんとやってるだけだろーが)
「それに―…」
「―もういいだろ!!!!」

 自分の予想をどっか遠くに置いてきぼりにする大きさで、俺の声がじんじんと教室に響いた。
「お前らが桜場の何を知ってんだよ!!!!」
俺は2人にむかって体の向きを変え、言葉をぶつけた。

「え?いや、知らねーけど…」
きょとん、と目を丸くした後藤にも容赦なんかしてやらない。
「だろ!?だったら変なこというなよ!!」
叫びながら、頭の中をぐるぐる回るのは桜場の顔。何がそうさせるのかはわからないけれど、無性に大きな声をだしたくなった。嫌味ったらしく笑った顔も、酔っ払ってニヤついた顔も、俺を心配して怒鳴りつけた時の顔も、授業中の必死な顔も

(…そりゃ、完璧にいいやつとは言わねぇけど…)
後藤や長谷川に悪口を言われるほど…嫌な奴だとも思わない…かも…知れない。

声を荒げたせいで、呼吸を整えるのに時間がかかった。
「…はぁ…はぁ…」
「…ったく…ムキになってんじゃねーよ」
頭を右手でかきながら長谷川はため息混じりにそういった。
「なってねーよ!!」
俺は長谷川を軽く睨んだ。
「なってるじゃねーか。…ったく…どいつもこいつもあんなののどこがいいんだか…」
「…え?何?」
長谷川の言葉をうまく聞き取れなかった。俺がわざわざ聞き返しても、長谷川はそっけなく「別に」と返すだけだった。
「てか、お前桜場のこと嫌いなんじゃなかったのかよ。」
長谷川が横目で俺をみつめた。

「えっ!?…嫌い…だけど…」
急な問いに、言葉がつまる。
「…別にいーんじゃん?清水が桜場を嫌いかどーかなんかさ。」
後藤は俺から視線を外しながら言った。
「だっ…だから、嫌いだっていってんだろ!!」
「ハァ?オレらが文句言っただけでキレたのにか?」
長谷川は俺を挑発しているように思えた。


 



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