2/59



ガッターン
とイスの倒れた大きな音がしたとき、やっと自分が立ち上がっていることに気づいた。

「どした?清水?」
立ち上がっている俺に、後藤が上目遣いで話し掛けてきた。
「え、いや、別になんにも?」
言葉をうまくつなげられず、単語ばかりが口からこぼれる。
「…」
長谷川は俺をちらりと盗みみると、目線を桜場に戻し
「なんか用スかぁ?桜場センセ?」

『ケンカ売ってますよ』と言わんばかりに声をかけた。俺の鼓動がはやくなっていっているのが誰にもばれませんように、と心で祈る。
「いや?お前に用はないよ。長谷川。」
笑みをふくんだ言葉に長谷川は「あ?」と威嚇(いかく)をかえしてみせた。

「清水。…わかってるよな?」
(…!!)
(…やばい 心臓が)
「…?なに、清水。お前またなんかしたのかよ」
後藤がうつむいている俺に話し掛けた。
「っあ、いや…」
俺は名前を呼ばれて反射的に後藤に目を向けたけど、左手で頭をかきながらできるだけ自然に視線を外した。

(くそ…『わかってるよな』ってなんだよっ)
「―っ…」
俺は後藤にも長谷川にも …桜場にも顔をみられないように下をむいていた。心臓の鼓動は時間が経つごとに緩やかになっていくどころか、…どんどん大きく、そしてはやくなっていく。いっこうに顔を上げる気配のない俺にしびれをきらしたのか後藤が立ち上がった。

「…清水、嫌がってるじゃん。桜場…お前なんかしたのかよ。」
後藤は、桜場を睨みつける。
(え!?)
その空気になんだか恐ろしさを感じ、俺は後藤の左肩をつかんだ。
「ちょ、待て後藤っ!なんでそんな話に―…」
「なんだよ、清水が嫌がってるから言ってんだろ?」
後藤は肩をつかんで自分をとめてくる俺にむかってそういった。
「っ…そーなんだ…けど…っ」
もっともなことを言われ、俺はまたうつむいてしまう。
「だったらいーだろ!?別に嫌な思いしてまで行かなくても―」

「…そうだな」
(…え)
少し離れた場所から聞こえた予想外の同意の声。

「悪かったな、清水。…オレはもう行くから」
桜場は体の向きを変えてあっさり教室から出て行ってしまった。
(ちょ…いやいやおかしいだろ!!なんでお前が賛成しちゃってんだ!!)



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -