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声を出そうとしても深いキスに飲み込まれてしまう。

キスの音
キスの感触

(何、なんでっ)
理性が芯から溶けていくような感じがして、わけがわからなくなってしまいそうだった。
「んんっ…んぅっ…」
桜場が俺の口のなかを這うたび、背筋がゾクゾクと震える。
「っ…はっ…ん…っ」
(!)
桜場は俺の目をみつめていた。息遣いが荒々しい。桜場の手の力が弱まると、自然に口づけはほどけた。

「っぷは…っ」
心臓が壊れそうに痛い
「っ…」
桜場は俺の耳元に口を近づけて

「…本気に決まってるだろ。…オレの愛は重いぞ」
「っ…!!」
一気に顔が熱くなり、恥ずかしさのあまり後ずさった。桜場の低い声は脳に直接響いてるみたいで、心臓の鼓動が早くなる。
(どうしてコイツはそういうことをあっさり言うんだ…っ!?)
「…お前が聞いたんだろ?」
俺の態度が気に入らなかったのか桜場は不機嫌そうな顔をした。

「そっそれはっ…!!」
――2度目のキス。
口元を手の甲でこすっても酒のにおいはしなかった。

(ああ…もう)
「じゃ、オレは行くから」
「早く行けっ」
俺は桜場に背を向けた。
(何なんだよ、ヘラヘラ笑いやがって…!)
桜場が小走りで去っていく足音が耳をかすめる。音は小さくなっていって、聞こえなくなってしまった。

「っ…はぁ〜っ」
全身の力が抜けて、俺はその場にへたりこんだ。

『本気に決まってるだろ』

(何言ってんだよ。…教師がっ)

『オレの愛は重いぞ』
「――…っ」
(せ、生徒に…っ)
こんなに心臓の音がうるさいのは…あいつが本当に本気だというのが伝わってきてしまったからで…
俺がいつも通りにできないことが…あいつのせいだということが
なんだかすごく気に入らない。

『好きだ』
「っ…」
むかつく
結局1時間目をサボった俺は、そのあとの授業にはしっかりとでた。
しかし…内容が頭に入ることはなかった。












アフタースクール
『桜場光一×清水連』編
《俺は数学が嫌いだ》
第一章
―終わり―

 



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