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響いたのは
聞き慣れた低い声。
俺は顔を上げた。
「…っ」
息をきらせた桜場が階段の下の踊り場にいた。俺は勢いよく立ち上がる。
(嘘だろ…なんでここだってばれた!?)
金髪のアホ顔が浮かんだ。
(後藤ッ…!!)
「はぁっ…は、良かっ…た、ほんとに、ここに…っ」
桜場が汗をふきながら階段に足をかけた。
「っく…来る…な」
俺を迎えにきたのか?体がふるえる。
「…清水…やっぱり何かあったんだな。」
「!!」
俺は自分の足元をみつめながら眉を寄せ、拳をにぎりしめた
「…ねえ…よ、なんも」
「わかりきった嘘をつくな。何があったのか話せ。」
桜場は躊躇(ちゅうちょ)なく足を進める。俺は振り返ってドアノブに手をかけた。いつも鍵がかかっていて、なんども後藤が無理矢理あけようとしたができなかった扉。ドアノブを右にひねるとガチャッと音がして鍵がかかっていることを伝える。
(開けよ…!!)
「…清水?そこは鍵がかかっているから開かないぞ?」
(知ってるよ。そんなこと。)
「来るなっていってんだろ!!」
俺はなんどもドアノブをひねった。ガチャガチャと扉が抵抗する音は大きくなり、桜場の足音は掻き消されてしまう。
「清水、落ち着け!」
だから俺は桜場が真後ろまで迫ってきたことに気づかなかった。
俺の右手の上に桜場の手が触れて
「―や、やめろっ!」
俺はその手を振り払って階段をおりようとした。
「待て、清水!!」
桜場は俺の手をつかんだ
「っ!はなせっ!!」
その手も勢いよく振り払う。すると、バランスを崩し

足を滑らせてしまった。

ぐらっと大きく後ろへ体が傾く。
「え」


一瞬で自分が頭から落ちてしまった映像が浮かんだ。嫌だ と俺は桜場にむかって手をのばす。
(助け―…!)
「清水っ!!!!」

桜場は俺の伸ばした手をがしっとつかみ、

抱き寄せるように俺を助けた。

「!」
どくん、どくん、と強く心臓の鼓動がきざまれる。
「…っ」
ふるえる手で桜場のスーツにしがみつく。抜け切らない恐怖で頭がうまくまわらなかった。
(お、落ちたかと思っ…)
「馬鹿野郎!!何考えてんだ、落ちたらどうする!!!!」
「!?」
桜場は俺の目をみつめて憤った。そして、我に返ったように言葉をつけたす。
「―あ、いや、すまない
つい…」
俺は手を離し桜場から離れた。
「…すみませんでした」
俺はあっさりと謝る。
「先生、俺を迎えにきてくれたんですね。わざわざすみません。―大丈夫ですよ。早く戻りましょう。」
わざと"先生"を強調して言った。桜場をみないまま階段をおりていく。
「…待て。何があったのかきちんと話してくれ。オレが何かしたのなら謝罪させてほしい。」
俺は足をとめた。

「…いいかげんにしろ」


 



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