25/34



1時間目は2年3組。
(…清水のいるクラスじゃないか…)

今になってそのことに気づき、オレは大きくため息をついた。
「どうしたんですか桜場せんせぇ〜?ため息なんてついちゃって」

後方より間の抜けた声がした。
「…京平か。なんでもないよ。」
オレは声だけで相手を判断し、京平のほうをみないまま答えた。
「…お前さぁ…変な噂たったら困るから『桜場先生』『梶原先生』って呼び合おう。って言ったのお前だろ?言い出しっぺがルール破んなよな。」

声の調子だけで京平の表情がわかってしまう。嫌味ったらしく笑う京平の顔が浮かんだ。

「…悪かった。気をつける。」

京平とは中学校からの付き合いだ。高校の時はオレの親の決めた学校に行かされてしまったため、会うことはなかったが大学で再会し、今にいたる。
「…っ……あ!そういやさ、お前清水とどうなってんの?」

明るい京平の声がざっくりと胸に突き刺さったような感覚がした。
「…は?何で清水が出てくるんだよ…」

(っ…何動揺してるんだ。ガキかオレは…)
名前を呼ぶことすらなんだかもどかしく感じる。

「いやー?今朝清水変だったしー。やっぱあん時のこと気にしてんのかねぇ。」
「あん時!?やっぱりなにかあったのかっ!?」

オレは勢いよく立ち上がり、気づけば京平の肩をつかんでいた。
(最近清水の様子がおかしかったのは、やはりオレが原因なのか!?)
「…こう……桜場先生。」
京平はオレを下の名前で呼びかけて、言い直した。

「…何だ」
「…ここ職員室。」
人は、取り乱すと周りが見えなくなってしまうということを知った瞬間だった。辺りを見回せば先生方が授業の準備をしていた手をとめ、目を見開いてこちらをみている。
「…っ…失礼しました。」

オレが軽く頭を下げると
「桜場先生らしくないですよ。大きな声を出すなんて。」
と、古文の辻谷先生が笑みをふくんでおっしゃった。それを合図に、あちこちで雑談が始まった。
「若いってのはいいねぇ〜」
「またまた柏木先生も十分お若いでしょう」
「いえ私ももうすぐ35になるんですよ」

ここは全寮制の男子高校であるというのもあって男の先生ばかりなので低い声しか聞こえないのだが。話はそれ、オレに向けられていた視線は外れた。
「…で、あん時って何だよ」
オレは声を抑えて聞いた。
「…そんくらい清水本人に聞けば。」

京平が明らかにオレから目をそらした。
「…?どうしたんだ急に」
「いえ別になんでもございませんよ?僕授業あるんで失礼しますねぇ〜」
京平は嘘くさいほど明るくそう言い、さっさと職員室を出ていってしまった。
(…?なんなんだアイツ…)
たまたま目に入った掛け時計の針をみて、時間を知った。
(しまった早く行かないと授業に遅れてしまう…!)

オレは授業に必要な道具を両手でもち、
足早に職員室を出た。


 



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -