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無理…なんだろうか

もう
もう戻れないのだろうか。
…つい最近まで、俺が桜場につっかかって。アイツがそれを受け流して嫌味を言って。俺はそんなアイツが気にくわなかったけど…その関係がなんとなく楽しくて。

…もう戻れないのか?

(いや…アイツは覚えていないんだから…俺が無かったことにすればいいだけなんだよな)

――なのに。
どうして
どうして俺は、それができないんだろう。

「っくそ…何だってんだよ…!」

俺は机に突っ伏したままそうつぶやいた。ドンドンと音をたてて床を蹴ってみるけれどスッキリしないままだ。

「あ゛ぁ〜っ!!もういいっ!!忘れた!!いつまでうじうじしてんだ気持ちわりぃっ!!知るかあんなヤツッ!!!!」
俺は上半身を起こすのと同時に天井にむかって叫んだ。
「…なんか清水荒れてんな…なんかあったのか?最近ほんとに変だぞ?」
後ろの声に応えるため、俺は体の向きを変えた。
「…べつになんもねーよ
普通だ普通。」

俺がそういうと、後藤はフッと鼻で笑った。
「…なんだよ。」
「べつにィ?どーせ聞いたって言わねーんだろ?」
「だから、なんもねぇって言ってんだろ」

ため息まじりで言った後藤に、俺は軽く怒気をこめてそう返した。
「あっそー。」
(…ムカツク)
後藤には全て見透かされている気がするんだよな。
「…あ。い、1時間目なんだかわかるか?」
無理矢理明るい声を出して、後藤の机にひじをついて顔を近付ける。後藤はだるそうに答えた
「…ん?…数学。」

「えっ」
思わず声が漏れた。
(…そう だっけ 忘れてた…)
「そっ…かぁ」
俺は体をもとの向きにして、イスを引いて座り直した。
(ふーん。へぇーえ。そーなんだー。だからどうだってことはないけどな。うん、教科書準備しなきゃー。)
「は、はは、はっ…」
こら、手。震えるな。馬鹿野郎。落ち着け。授業中座ってるだけだ。大丈夫だから。…大丈夫じゃないとだめなんだよ

桜場は酔っ払ってて
誰かと俺を間違えたんだ。
早く忘れてやらないと

『そのキスマークは彼女につけられたんだろう』

「…っ」
…桜場だって俺のことなんか迷惑だろうし。べつにたいしたことじゃないんだ。
――俺は、
『清水』
あのことを

『…好きだ』

無かったことにするだけなんだから…




 



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