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「後藤っ!!早くしろよ
おいてくぞ!?」
「えっ!?待ってよ清水っ!!」
結局俺のベットで時間ぎりぎりまで寝ていた後藤は、シャツをだらっと出し、ボタンが上から3つほど開いたまま、焦りながらズボンのベルトをとめている。

「先廊下でてるからな」
「えぇえ〜っ!!」
俺は後藤の抗議を背中で聞き、寮室の扉を開け、廊下へでた。
携帯で時間を確認すれば液晶画面には『7時58分』と印されていた。
(やっべぇ…走らねーとだめじゃねーかよ)
教室には8時10分までにはいっていれば遅刻にはならない。しかし、まず寮と校舎がつながっている渡り廊下を通って学校へ行き、そこから2年3組の教室に行かなければならない。後藤を待つとなれば間に合うかどうかはわからなかった。

俺は小さくため息をつく。そして、近づいて来る足音に気づいた。

「清水。何やってるんだ
早く教室行け。」
「…!!!!」
聞き慣れた低い声に俺の心臓はドクンと大きな音を響かせた。
(…桜場…)
「いえ、俺は後藤くん待ってるんで。」
俺は顔をあげる勇気はなく、桜場の足元をみるのでせいいっぱいだった。
「…後藤…か」

(嫌だ、な…)

早く立ち去ってほしい。
桜場の声を聞いていると今朝の夢を思い出してしまう。
それなのに
「せ、先生はどうされたんですか?いつもはもっと早いのに…」
なんで…俺は
「…あ、いや…数学の小テストを採点したものを部屋に忘れていたんだ。」
「そーですか」
なんで会話なんてしてるんだろうか。
「…清水。昨日は…」
「っ!」
『昨日』という言葉に肩が震えた。

「―は、早く行ったほうがいいんじゃないですか?
俺もすぐに行きますし」
「あ…ああ。でも昨日の」
「早く!!…行ってください…」
前半は桜場の言葉を掻き消すために大きな声を出してしまった。
どうあっても顔をあげない俺を、…桜場はどう思っているんだろう。
永遠に感じられた短い沈黙がすぎ、桜場は「遅刻するなよ」と言葉を残して足早に去って行った。

(…俺は馬鹿かっ…)後藤が「わっりぃ清水!!早くいこーぜ!!」と言って扉を勢いよく開けたのは

その数秒後だった。


 
 



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