11/34



「ーっわ!?」

桜場が、下から右手を俺のシャツの中にいれてきた。大きな手で腹のあたりを触られるとくすぐったい。

(何考えてんだよコイツッ…)

逃げようとして左足をさげると、かかとが壁にぶつかった。

(え…!?)
そして俺と桜場が居る場所が角をまがってすぐのところだったことに気づく。そのまま背中が壁にもたれかかるような体制になってしまった。

「ちょ、さくっ…待て、おいっ」

桜場の大きな手はするすると上のほうにあがってきて
俺の胸に触れた。

「ッ…!」
動揺してしまい、一瞬右手が俺の口を離れた。

(ちくしょ…逃げ…らんねーじゃ…ねーかよっ…)

「っさ、桜場っ…冗…談っ…やめろっ…て、お前っ…何、してんだよっ…!」

声が、うまくでない。

こんな夜中だし、誰もいないとは思うけれど、それでもすぐそばにいる桜場にしか聞こえない声で必死に抗議した。
―俺の言葉に桜場はぴくりとも反応しない。俺達の服がこすれる音と、桜場が俺に触る音だけが聞こえて
嗅覚は桜場からする酒の臭いに奪われた。

「…お、おいっ…ぅ…っや、やめ…っ…バカ…ヤロ…ッ」

桜場が指先を動かすたび出したくもない声がもれる。それでも何か口に出して抗議を続けていないとこの状況に飲み込まれてしまいそうで怖い。


…流されるのは嫌だった。



 



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -